ゲストの部屋

37号 往来っ子新聞×ルーエの伝言 寄稿者;日比藍子(往来堂書店)

はじめましてこんにちは。文京区千駄木にある往来堂書店という本屋で働いております日比と申します。今回はご縁があってルーエの伝言に書かせていただくことになりました。どうぞよろしくおねがいします。

往来堂は町の小さな本屋です。吉祥寺から御茶ノ水まで中央線に乗り、そこから千代田線に乗り換えて三つ目の駅が千駄木です(東西線で大手町乗換えも可)。地下鉄の改札を出て地上に上がると大きい通りが走っていますが、一本裏道に入ると静かでしっとりとした路地が続いています。靴紐が解けていると、「あ、お姉さん靴紐解けてる!」とすぐに教えてくれるような町です。そんな町で働きながら、「たぶん週刊往来っ子新聞」という学級新聞風の手書きのフリーペーパーを作ったりしていると、これまであまり触れ合ってこなかった書店員横のつながり?みたいなものの仲間に入れてもらい、花本さんから「一緒にフェアやりましょうよ」とお誘いを受け、もうすぐルーエさんとの共同企画「あの人に贈りたい本」のフェアが始まります。ルーエさんと往来堂が普段お付き合い頂いている方々の大切な本を集めたこれぞ地元密着の贈り物フェアです。オリジナルのPOPやプレゼント企画も進行中。

ぜひ千駄木にも遊びにいらしてください。往来堂は10時から23時まで営業しています!

35号 ブックだブックだ言うけれど… 寄稿者:ドストエフスキーJr

「ブックだブックだ言うけれど、ロールはいったい何処にいっちまったんだ?」

「現在のロック・シーンの基盤は90年代に形作られた。フジロックと3つのバンドがその中心的役割を担った。ブランキー・ジェット・シティー、ハイロウズ、そして、thee michelle gun elephantである」by渋谷陽一
「ロックだロックだ言うけれど、ロールはいったい何処にいっちまったんだ?」by キース・リチャーズ

ミッシェル・ガン・エレファントこそが日本最高のrock’n’rollバンドである。耳をつんざくギターカッティング。不機嫌そうなベースとドラム。叫んでいるのか喋っているのか歌っているのか笑っているのか分からんチバの声。ウェルカムザノイズ。「調和」を拒んだカラマーゾフの末裔。天上のリズムに対する、反抗としての爆音。決して眠らせてくれない、不眠症患者のノイズミュージック。

ミッシェルの放つ音に含まれるフラストレーションは異常に高い。聴いているとイラついてくる。イラついている時に聴くと、フラストレーションが何倍にも増幅し、やがて爆発する。心の中で倦怠が叫び、意識が覚めていく。僕たちが知覚するのは、死を宣告された革命家の気分。

ミッシェルはロックの被害者ではなく、ロックの加害者であった。全てを壊して、混沌を作った。最後に、生きたままあの世にロールしてった。

記念すべきブックンロールの開催記念に、アベから一言コメントが届いた。 「吉祥寺は日本のサンフランシスコだぜ!」

35号 プロジェクトBR 寄稿者:空犬

それは、いつものように、飲み会のネタから始まったのでした。毎月の「吉っ読」例会。そこでは、冗談とも本気ともつかない話が飛び交うのが常。たまたま「吉っ読」メンバーに音楽好きが多いこともあって、ある日、例会の会場が吉祥寺のロックバーになったのです。いつになく音楽ネタで盛り上がり、どんどん話は脱線かつ肥大化し、いつのまにか、よっしゃ吉っ読でバンドやるか、やるぞ、おー、みたいな話になったわけです。酔いでガードが下がるにしても限度がありますよね。ここまでは、いつものノリ。我々吉っ読の例会ではよくあることです。

ところが。そのような例会での話の多くは翌日には忘れられているものなんですが、その回にかぎって、本気にしちゃった人がいたんですね。誰って、当然、わたくし空犬です。だって、学生時代、バンドに少なからぬ情熱を傾けていた身ですから。バンドだのライヴだのの話が出ちゃったら、これはもう無視するわけにはいきません。

次の飲み会で、早速披露したわけです。バンド案、さらにバンドの発表舞台として、イベントの企画を。レジメが配られたときには、さすがに全員(除く空犬)、マンガみたいなあんぐり顔になってましたね。こちらは本業は編集者、飲みネタを「企画」にするのが仕事みたいなものですからね。

こうして、吉祥寺書店員の会「吉っ読」のイベント「ブックンロール」が企画されたわけです。「吉っ読」としては初のイベントとなる、このブックンロール。ぜひとも成功に終わらせて、第2回、3回と続けていき、吉祥寺の書店イベントの名物として、定着させたいものです。

35号 苺が原(ジョン・レノン作) 寄稿者:村田活彦訳

さあ行こうよ
苺が原へ行くんだ
ホントのことなんてないよ
ためらうことはないよ
苺が原はずっと ずっと

目をつぶって生きるのはカンタンだけど
なにもかも悪いように思えてしまう
えらくなるのはむずかしくなってきたけど
うまくいくさ 別にたいしたことじゃない

ねえ行こうよ
苺が原へ行くんだ
ホントのことなんてないよ
ためらうことはないよ
苺が原へずっと ずっと

この木には誰もいないみたいだ
高いところにも低いところにもどこにも
みんなはそう思わないんだろ
うけど
でも大丈夫 そんなに悪いことじゃない

だからほら行こうよ
苺が原へ行くんだ
ホントのことなんてないよ
ためらうことはないよ
苺が原はずっと ずっと

いつも いつも考えてる 自分のこと
ほら 夢の中ならわかってること
わかるはずなんだ つまり そうなんだ
いやちがうんだ それじゃダメなんだよ

さあ行こうよ
苺が原へ行くんだ
ホントのことなんてないよ
ためらうことはないよ
苺が原はずっと ずっと
苺が原へずっと ずっと
苺が原はずっと ずっと

34号 君の名前で検索をしたけど出てこなかった 寄稿者:古崎未央

ともだちを、
とりのぞかれて、
そしてその上に
新しい景色をぬりつぶす、
机のひょうめんに
つるつるした落書が残り、
だれもそれを、
消すことができないでいる

おまえたち、
いつまで泣いてるんだよ、ばーか
おれは少しも悲しくない
そうアピールしていたK少年は
とりのぞかれて、綺麗に整えられた遺体を前に
ひたひたに湿って、
ずっと泣いていた、帰り道の間も
わたしはすっかり、
乾ききっていたのに、

おまえたち、
これが世界だと突きつけて
お昼の放送では今月の歌が流れて
「みんなはひとりのために、ひとりはみんなのために」
ばかをいうなよ
彼ひとりがいなくなって
わたしたちがそれを、

踏み台にして、
死んでなお彼は、
踏みつけられて、
それでも生きていくのだと、

予感に満ちた
向こう側が透けている(あくまでも不透明、ってこと)
大きな手が、
教室に存在していた、
硬直して座ったまま、
わたしたちは意識しないようつとめた
(きっと学級文庫の、隣あたり)
まだ、水泳の着替えのために
部屋が分かたれる
まえのことだ
気付いているんだろう、
存在しないことによる存在感について
そして、やがて薄まっていくことについて
水泳の時間に見学をする女子が増えて、
わたしたちはただの
でことぼこになっていく

うわがきできない人が増えて
一番はじめに削除される
そういうクラスメイトであると自覚するので
だれひとりとして
忘れないでいると決めて
そしてわたしを、
わたしは忘れる

33号 600字では書き切れない世界文学 寄稿者:ピクウィク倶楽部代表 蜷川

「世界文学」という言葉をわざわざ使うとき、それは「海外文学」や「外国文学」とは一線を画した響きを帯びる。池澤夏樹や沼野充義の文章を引くまでもなく定義はいくらでも考えられるが、私見では「世界文学」とは、どの時代のどの国の人が読んでも面白がることのできる文学を指すものだ。例えば初めてホメロスを読む人はその面白さにページを繰る手が止められなくなる。今更『イリアス』や『オデュッセイア』の魅力を書き連ねるつもりもないが、ここで一度立ち止まって考えてみると、僕らは2000年以上も前に書かれたものを面白いと感じることができるのだ。冷静に考えれば考えるほど、それは普通のことではない。これは「世界文学」という言葉に内包されている奇跡の、確たる証拠なのである。あらゆる時代にあらゆる場所で、あらゆる人びとの内に化学反応を起こしてきたこれらの文学作品が一堂に会したら、一体どれほどのめくるめく世界が生まれることだろう。僕らピクウィック・クラブの関心はそこにあった。4月1日より実施するフェア「ワールド文学カップ」ではホメロスから伊藤計劃まで、読んだことのないものは一冊も入れないというルールを設けて650冊を選び出し、その全てに手書きの推薦コメントを用意した。参加国は全部で53ヵ国、会場は紀伊國屋書店新宿本店2階中央催事場。世界文学の奇跡を、是非とも体感して欲しい。

ピクウィック・クラブ公式ブログ http://booklog.kinokuniya.co.jp/pickwick/

30号 阿房列車に乗せられて 寄稿者:下村すなお

「阿房列車」にその気にさせられて夜行バスに乗って新宿から大阪まで行ったことがあった。 行きのバスで観光客らしい外国人が隣に座った。楽にするために靴を脱いでいるのだが、そこから上ってくるにおいがこちらとしては耐えられない。なるべく鼻で息をしないようにと努めてみるが、締め切ったバスの中は空気が薄く、口だけの呼吸では息苦しくなってくる。加えて暑い。夜行バスだから大抵のお客は寝てしまうので、運転席と客席の間に光が入らないようにカーテンが引かれている。運転手には客席の暑い寒いが分からないらしく、エアコンはずっとつかないままだった。結局、下駄箱の中のような状況のまま、一晩バスの中ですごす羽目になった。

バスは朝の7時半頃に梅田に到着した。隣の客は目を覚ましたらいなくなっていたので、その前の京都で降りたと思う。 着いてしまってもお手本が「阿房列車」の旅なので行きたい場所などは特にない。切符を買って、尼崎・西宮・宝塚など聞いたことのある駅にちょっと降りてみたりしながら、ふらふらして、帰りの便が来るまで時間を潰して過ごした。 帰りはひたすら寝ていたので、何にも覚えていない。気付いたらもう新宿に着いていた。

第一阿房列車 (新潮文庫)
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30号 書籍化希望のTV番組 寄稿者:ナカダヨーコ

「リーダー’sハウトゥーBOOKジョーシマサイト」(テレビ朝日)が惜しくも終了してしまった。 最終回のひとつ前に紹介されたハウトゥーは「合コンで根こそぎゴッソリお持ち帰りする方法」だった。

一杯目にビールをジョッキで頼み、乾杯の後、持ち手を目当ての女の子に向けて、仲間にどの子を狙うか知らせる。バッティングを回避することによって、無駄なくターゲットを攻められるんだとか。 それはすごい名案だ!と思ったが、これを知ってしまった以上、持ち手の向きを見て初っ端からテンションが下がる可能性も出てくるというもの。「あー、私には誰の持ち手も向いてない……」とか「あー、アイツが折れて渋々私に……」とか。これは元々女子がやっていた合コンテクを番組が男子用に紹介したものだそうなので、男子も一杯目のジョッキの持ち手には怯えることになるだろう。 合コンて戦略的で怖いなぁ。とはいえ、合コンなんてまったく無縁だし、怖がるだけ無駄なんだけど。 無駄な合コン知識がやたらに豊富になったりもするけれど、この番組は着眼点や言葉選びのセンスがすごく面白くて毎回確実に楽しかった。

ためになるし。「ハウトゥーBOOK」ってぐらいだから、書籍化してくれたらうれしいなぁと思う

29号 書を求めて町へ出よう 寄稿者:ノブミチ

格調高く岩波で決めるか
刺激を求めて河出か幻冬舎か
わたせせいぞうに覆われた漱石は素通り
我輩は失業手当を当てにしている素浪人
「ちい散歩」が終わる頃にテレビから遠ざかり
止まることを嫌がる落ち着きのない両足
ブックオフで立ち読みしている暇があれば町を歩く
履きこんだコンバース・オールスターは少しだけ寒く
暖を取るためや暇つぶしでなく文化を得るため
書店に入る目的といったらただそれだけ
新刊にベストセラー、店舗独自の特集コーナー
やたらと目に付く勝間和代の集中砲火
そんな現状から避難した先に並んだ文庫
マスとコアが廉価で入り混じる文化のるつぼ
国内か海外か、古典か現代か
入店前に絞る必要のあるベテランの倹約家
CDのジャケットを見るように表紙を眺める
ヴォネガットの作品を彩る和田誠を称える
気まぐれで在庫数をチェックする赤川次郎
どこまでも続く背表紙を追って起こる眼精疲労
外の空気を吸うために向かった出口
そこで待ち構えているのは彼ら特有の手口
差し出されたハガキを受け取ったら最後
英会話の勧誘に捕まるからそれだけは気をつけろ

24号 在日の恋人 寄稿者:辻純平(河出書房新社)

ある日、会社のアルバイトの方の送別会で、編集部のYがこれから出る本の話をしてきた。タイトルは『在日の恋人』。在日二世の恋人を持つ美術家が、マンガン鉱(朝鮮から強制連行されてきた人たちが掘った洞窟のような場所)で作品作りする感動作、というような説明を受けた時、内心「24時間テレビ的な話だったら嫌だな」と思い、読むことをちょっと躊躇した。でも「多分好きだと思うよ」という言葉を信じ、読んでみた。読んでみて凄く良い、と思った。もともと「在日」というようなテーマの本は無意識に避けているようなところがあったし、あまり知識もない。でもこの本は、そういった差別問題に対してヒステリックに何かを主張しようとはしていなかった。ありきたりな言葉や借り物の思想でお茶を濁すようなことはせず、現代美術家であるという自身の立場から問題に向き合おうとしていた。それもとびきり真っ直ぐなまなざしで。その姿勢が文章から滲み出ていて、そこが物凄く良いと思った。物語は、ある程度の普遍性をきちんと持っている。この本を一人でも多くの人に読んでもらいたいと思い、事前に書店員さんにゲラを渡すなどして、個人として出来ることを試してみた。書店員さんの反応はとても良く、期待しながら発売を迎えたが、今現在、思うように本は売れていない。自分の力の無さが悲しいし、この状況が悔しい。でもこのを少しでも多くの人に届けたいから、まだやれることをやる。もしどこかで、『在日の恋人』という本を見かけたら、ぜひ手にとって見てください。決して後悔はさせないから。 

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24号 主任から檄! 寄稿者:茂瀬野滋

まず『実用書』昨年は弁当水筒風呂敷など昔の習慣を節約やエコで見直す動きでした。で今年クルのがコレ『買物かご』と『編み笠』自作です。エコバック?古いです。『笠』は野外フェスで長靴の次にキマす、外人にも大ウケ。GW頃「おしゃれ工房」でやって、文化出版局あたりから本が出ます。  で『文芸書』は最年少レースの頭打ちで、注目されたのが高齢者デビュー。「氷の華」の天野節子や海野碧など、今年はさらに加速します。そしてクイズ番組や総理のおかげの「漢字ブーム」、この2つの現象から導き出されるのはそう、『旧仮名遣い』の復活です!夏休みには渋谷で「てふ(超)イケてる」などと若者たちが言ってるはず。  お次は『コミック』昨年一番の話題は「西遊妖猿伝」の連載再開だった訳ですが、「続編」でも「リメイク」でもなく『再開』コレです。車田正美『男坂第二部』そして「HELLSING」が終わったヒラコーの『大同人物語』復活!またコミック雑誌の再編による掲載誌の減少、そうなると何もコミック誌ではなく「キン肉マン2世」や「テレプシコーラ」の様に読者層のはっきりした雑誌に連載すれば良い訳で、「食楽」で『孤独のグルメ』とか「クウネル」にて高野文子『帰ってきたるきさん』再開!となります。「サライ」で『赤めだか』コミック化も。 でも一番の願いは一日も早い『岡崎京子復帰』でしょう。

23号 上野より愛をこめて 寄稿者:長谷川仁美

吉祥寺のみなさん、はじめまして。上野の書店員、長谷川と申します。

上野なんてもう10年は行ってない!…そんなオシャレなあなたに、とっておきの上野の楽しみかたをお教えしましょう。

それは、上野公園でビールを飲むこと!! 美術館・博物館、動物園、不忍池、寛永寺、春は桜、東京芸大など、様々な顔をもつ上野恩賜公園ですが、散歩だけではもったいない!上野で働いて4年。悩んだり、悲しかったときは一人で、パーっとしたいときには仕事仲間とみんなで、数えきれないくらいの缶ビールをここで空けました。 ビールを飲むだけではありません。酔いさましに散歩したり、好きな人とお昼を食べながら話をしたり、泣いたり、キスしたり。

何かあるとここへきていろんなわたしを見守ってくれた上野公園。 吉祥寺からはちょっと遠いけど、どんな人にとっても懐の深い、すてきな公園だと思います。

もちろん、読書も。昼下がりの上野公園でおすすめの一冊は松浦弥太郎「くちぶえサンドイッチ」。ふだん見慣れた風景が、きらきら見えてくるから不思議。今度の休みはぜひ上野へ。 会いにきてね!

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22号 最近のこと 寄稿者:クマモト

先日、シンガーソングライターの湯川潮音さんのコンサートに行って来ました。生歌を聴くのは久しぶりだったので、まだかまだかとこの日を心待ちにしていました。そしていよいよ開演。神様はこの人にどえらいプレゼントをしたなァ・・・と思うくらい、美しく澄んだ真っすぐな声。以前より芯が強くなってこれから10年後20年後どんな歌い手になっているのだろう?そんな風に思いながら見ていました。そしてセンチメンタル・シティ・ロマンスのお三方の素晴らしい演奏とともにあっという間にアンコール。再び登場し、ラストは即興の替え歌。「♪電車を降りたら、まるで韓国のような所 今日はグローブ座に来てくれてありがとう この歌、今つくってるの。字余りでごめんなさい」と笑いを誘いつつ「死ぬまで歌い続けます」の一言。もう、号泣してしまいました。真摯な気持ちの一言を聞いて、この日来られて良かったー!としみじみ思いました。山や海に行った後、ブラックコーヒーがいつもより苦かったり御飯の味をダイレクトに感じたりしますが、この日もまさしくそうでした。

話は変わりますが、市川準監督が亡くなられました。私が今まで一番多く見た映画は「つぐみ」です。ただただ好きで何十回も見ました。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

21号 一期一会ある児童書担当の告白 寄稿者:つるたろう

「次のルエ伝のゲスト、つるちゃんに決まったから」

休み明け、さぁ今週も頑張ろうと出勤した日に言われました。なんてこった・・・。聞かされたテーマも難しい。でも・・・書かねば!!

児童書担当になって7ヵ月経ちました。怪傑ゾロリの売れゆきの強さ、親・子共に人気のエルマーのぼうけん、昔ながらの絵本、意外と売れるギネスブック、そしてポケモン不動の人気。 私は小学生の頃、全くと言っていいほど本を読みませんでした。読書の時間、図書室に行っても、ウォーリーを探したり、棚と棚のすき間に隠れて友達とおしゃべりしたり。それが普通だと思ってました。みんなもそうだと。

児童書担当になって、小学生が読み物を買っていくのを目にします。最初はすごいなぁよくあんなに字がいっぱいの本を読むなぁ。とびっくりしてました。でもよくよく考えると普通じゃなかったのは私の方?! でも読書好きのルーエのスタッフも「本を読むようになったのは、大学生からだよ」とか意外と活字デビューが遅かったり、ちょっとホッとします。 大切なのは本を読むきっかけと出会えるかどうかなのですかね。そのきっかけをこのお店で見つけてもらえたら、どんなに嬉しいことでしょう。

あとこれだけは言わせてください。レジ前での親子バトル、私は今でも子の気持ち。「お母さん!本も読むからマンガも買って!!」 ちなみに今回、私に課せられたテーマは“児童書担当としてのよろこびとかなしみ”でした。

20号 銀座の中にあっても、泥臭くありたい 寄稿者:都見手河

1年ちょっと前、たまたま見つけた書店の求人広告を見つけるまで、銀座なんてほとんど用事の無い場所だった。まぁ足を運べば、映画館はたくさんあるし、多少平均額を越えていいのなら食事する処も困ることは無い。北に向かえば博品館でおもちゃを眺められるし(買わないのか?)、西に足を運べば歌舞伎座の建物を鑑賞する事も出来る(歌舞伎を鑑賞したことは無いが…)東に歩く元気があれば日比谷公園で一服出来る…かもしれないし(実際にはまだ行ったことが無かったりして)、ゴジラ像に挨拶も出来るだろう。

それでも積極的に出向く街ではなかった。 面接の時に「うちの店にはお客さんとして来てましたか?」って質問に対して、苦笑いしか浮かべられなかった自分をよく雇ってくれたもんだ。

そんなもんで、働き始める前まで銀座に抱いていたイメージといえば…5丁目の坪単価が日本一とか、海外ブランドのビルがそこら辺に建ち並んでるなど…ホントに一部の人間しか用事を持って訪れることは無い、いわばセレブ御用達の街だった。 でも…その場所で働くと判るもので、やっぱりいらっしゃるもんですねぇ……一定の価値観を崩してくれる人が。

いつもと変わらぬ昼下がりの忙しないレジ。定期的に会社の買い物をして頂いているM屋銀座のSさんだ。 「すいませーん。講談社から出てる『セオリー』ってシリーズの『リアル・リッチの世界』、あります?」 あぁ、やっぱり銀座で仕事をしていると必要なのねぇ…実際売れているし。「はーい、ありますよ。売れてるんですよねぇ…どうぞ、こちらで」 「…な〜んか、『ケッ』って感じですよね!」…っとお、びっくらこいた!いや、このSさんて方は背が高くて、超がつくほど美人な人なのだ。オマケにいつも堂々としているから、自分の中では銀座の代名詞的な存在にしていたのだが…まさか天下の百貨店の広報で働く人から金持ち否定の言葉が出るとは思わなかった。

その後も、顔見知りになると気さくに話をしてくれる。(『花男』なんかも、最新刊が出ると必ず買ってくれる。「高校生の頃から読んでるから、つい」だそうだ) 銀座というのは、やっぱり特別な街かもしれないが…、特別な人だけが集まる訳では無いのだ。

余計な気負いが抜けると、その場所に居るのがずいぶん楽になる。Sさんに感謝。 冒頭のセリフは、「散歩の達人」という雑誌の「Good Job,Book Shop」(町の本屋さんを紹介するページ)に、銀座のお店の店長が寄せたコメントだ。…働き易い街なのか、職場が変わっているのかはまだ分からんが、銀座でももうしばらく頑張ってみようかしら。

18号 勝手に新選組 寄稿者:フルフョー

初めまして。突然ですが私の大好きな幕末時代、と言うか新選組、、、特に土方歳三に対する思いを書きたいと思います。と言っても、まだまだ新選組について勉強中の身。この世で一番の土方好きになるには程遠く、、、つい先日なんぞ、始めたばかりのモンスターハンターのキャラ名を「TOSHIZO」にして喜び、武器はもちろん太刀。ですが、近藤勇の「虎鉄」はあるのに、土方の「兼定」が無い?なんてちょこざいなり!と叫んでいる程度。話それましたが、土方歳三について知らない事が沢山あるワケでして、なので私の中で固まりつつあった土方像を見事に払拭し、新しい発見をさせてくれた本を力いっぱい紹介させて頂きます。 北方謙三「黒龍の柩 上・下」幻冬舎文庫 。

序盤は悩んで考えてばかりいる歳三君。そんな、こんなの私の好きな歳さんじゃない!!でも山南さんとの関係は素晴らしいです。と感じながら、中盤〜終わりに進むにつれ展開の早さ、盛り上がり方、振り落とされんばかりのスピード感に圧倒。己の夢と信念に向かって突っ走る副長土方歳三。とにかく強い、強い!強い!!!漢字二文字で表すなら、まさしく「最強」。残りページが減っていくのが凄く刹なくて涙々でした。ラストは意見が分かれそうな気もしますが、私は「有」です。だって、、、おっとこれ以上は書けません。ぜひぜひ読んで頂きたい一冊です。

それから余談ですが、先月五月十一日は土方歳三の命日。今年は百四十回忌でした。え〜んっ歳さ〜んっ

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17号 拝啓フレデリック・ショパン様 寄稿者:サト子・ブルスケッタスキー

「ルエ伝に載せる原稿書いとけ!」と命令された。

さて、どうしましょ。何書けばいいかしら: 散々迷ったあげく、私の愛するショパンに手紙でも書いてみようと思いついた。 書くことはたくさんある。そちら(天国)ではどうしているか。あの曲のあの和音はどういう意味なのか。ジョルジュ・サンド(ショパンの元カノ)との事の真相。そして何より、私の彼への愛! しかし、それを書くということは、すなわち私のダイレクトな心情の吐露となってしまう可能性大である。それを他人に読まれるなんて、恥ずかしいわ。

そんなこんなで今回は、彼の有名な「別れの曲」でもなく「革命のエチュード」でもなく、「マズルカ」をご紹介。 マズルカ、とは伝統的なポーランド農民の変則的リズムをもった舞曲のことで、ショパンが生涯でこの曲を作った数は約五十におよぶ。 もともと自分の感情をそのまま楽譜に書き落としてしまうということについては天才的なショパンだったが、ことにこのマズルカには最も率直に彼の血や肉の部分が表れていて、聞いていると、彼の艶かしい日記をのぞき見しているような気になり、いてもたってもいられなくなってしまう。 ポーランド人特有の暗い感情をジル?ジェル?ジャル?というのだが(正確な言葉、忘れました。悪しからず)、日本人にとってのわびさびに似たようなもので、「外国の奴にわびさびの本質がわかってたまるか!」という気持ちが、おそらくポーランド人にとってのジル?ジェル?にもあるに違いない。

ところで私は、このマズルカを夜な夜な聴きながら、このジョル?が心に染み入ってくるにつけ、「もしかして、あたしの前世ってポーランド人だったのかも」と勝手な妄想を膨らますのだった。

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16号 「イーダ」のブックレビュー 寄稿者:石渡紀美

なんかスゴい絵本みつけました。標準語と博多弁で書かれているバイリン絵本「飼育係長」よしながこうたく作。(「給食番長」も気になる〜)しかし方言にはどうしてあげなパワーがあるとですかね?素朴パワー。迫力パワー。温度があるんですね。一度方言バージョンで読んだら、もう標準語で読もうなんて思わないもんねそれにしても方言で読むと、テンションば上がるとです。隣に子どもがいることも忘れ、しばしの博多っ子気分満喫。ただし、どんなに本人はそのつもりでも、私の博多弁は関西弁の域を出ていないらしい。九州遠し。ところで余談ではあるが、東京女子のごたぶんにもれず、私にも関西弁男子に憧れる時期があった(12さい)・・・。

「イーダ」は、発行人と親交の深い石渡さんが製作しているフリーペーパーです。コンセプトは「きもちいいことをまいにちさがす」息子さんの成長を追う「KID DAYS」や短歌のコーナーなどがあってとてもおもしろいです。春の一首。なにかが土中で始まっている 鳥があんなにつつくからには

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10号 千葉から吉祥寺へ 寄稿者:宇田川拓也

1962年、ユタ州ボンヌヴィル塩平原で開催された地上最速マシンのスピードを競う大会――スピードウィークで、会場はニュージーランドの片田舎からはるばるやって来たひとりの爺さんの爆走に度肝を抜き、大きな喝采を送った。40年もの長きに渡って独自に改造し続けた、骨董品ともいえる1920年製バイク――インディアン・スカウトで、なんと時速288キロというとんでもない記録を叩き出したからだ。

映画『世界最速のインディアン』をご覧になった方、あるいは車やバイクに造詣の深い方なら、ああアンソニー・ホプキンスが演じた、あのバート・マンローのことだなと、すぐにピンときたことと思う。たったひとりの年金暮らしでさっぱり金もなかったが、ただただ朝から晩まで自分のマシンを速くすることにのみ情熱を傾け、飽くなきチャレンジ精神でスピードウィークへの挑戦を続けた結果、ついにいまだ破られることのない偉大なる世界最速記録を打ち立ててしまった変わり者の爺さん。そんなスピード男の痛快一代記、ジョージ・ベッグ著『バート・マンロー スピードの神に恋した男』(ランダムハウス講談社)は、まるで少年が夢中になって遊ぶように、人生をかけて憧れを貫く生き方がどれほど無垢で魅力的でカッコイイかを教えてくれる、私が今年出逢い、広く広く読まれて欲しいと切に願う愛すべき1冊である。また、バート爺さんのエピソードとともに、歴史に名を刻んだスピード野郎たちの活躍やボンヌヴィルで行なわれた大会の変遷を綴った、山崎明夫『マッハ1.02 地上最速の男たち』(木世文庫)も併せてオススメと補足しておく。

ところで、バート・マンローは生涯をかけてスピードを追い求めたが、書店員はというと「満ち足りた読書のきっかけを、どれだけお客様に提供できるか?」が、追い求めるべき使命といえる。それはもちろん、本と同じくらい酒を愛する千葉の酔いどれ書店員集団――われわれ「酒飲み書店員」とて変わるものではない。周りから見れば、ただ酒をあおって本の話で盛り上がっているだけの集まりにしか見えないかもしれないが、自分たちが出逢った良き作品をひとりでも多くのひとに知っていただき、心の潤いを得る一助になればと願う強い想いは、根底でいささかも揺らぐものではない。

このたび、「ルーエの伝言」を発行されているBOOKSルーエさんと、弘栄堂書店さんの有志が中心となり、吉祥寺の読書カルチャーを背負って立つべく、書店員グループ「吉っ読」が結成された。「酒飲み書店員」とアプローチの仕方は違えど、書店員の使命を全うすべく走り出した新たな同志の誕生に心から感激している。読み倒し、飲み倒し、しゃべり倒して、売り倒し……周りがあきれるくらい自分たちが楽しみ倒して、大いに吉祥寺を魅了して欲しい。無邪気に、真摯に、がむしゃらに――そう、バート・マンローのように。

バート・マンロー スピードの神に恋した男
ジョージ・ベッグ
ランダムハウス講談社
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9号 競合から共闘へ 寄稿者:空犬

お客さんにとって理想の書店とは、究極的には「求めている本が置いてある店」でしょう。ただ、現在の新刊点数からして、お客さんの数からして、個人の嗜好性のきわめて高い書物の商品特性からして、ある客の購買欲とあるお店の品揃えとが合致することは、実は非常にむずかしいことなのかもしれません。だから「競合から共闘へ」なのです。「求めている本が置いてある店」にお客さんが出会う可能性をその「街」がカバーするのです。

この「ルーエの伝言」を手にされている方は、おそらくルーエをよく利用しているお客さんでしょう。数ある書店のなかからルーエを選んで足を運ばれたのでしょう。しかし、毎度ほしい本が見つかるとはかぎりません。お探しの本がルーエにないこともあるでしょう。そんなときに、あとでネットで探せばいいやとか、なければ読まなくていいや、なんて思わずに、もう1軒、吉祥寺の書店をのぞいてみてください。吉祥寺には、新刊や雑誌のショーケースのような弘栄堂もあれば、芸術・文芸書が豊富なリブロも、専門書が充実している啓文堂もあります。そのほか、ユニークな専門書店、古書店がたくさんある街、それが吉祥寺です。「○○書店で本を」から「吉祥寺で本を」、それが買う側にとっても、売る側にとっても、そして街全体にとっても、実はいちばんいいかたちなのかもしれません。「吉っ読」は、それをこれから模索してみようと思うのです。

9号 「吉っ読」の狼煙 寄稿者:花本武

私はJR吉祥寺駅北口ロータリーを抜けて伸びるアーケード街「サンロード」の半ば右手の書店「ブックス・ルーエ」に勤める一店員であります。

諸々の業務に追われ家路につけば、入浴も翌朝にまわし、床に就く。週に何日かそんな日もあるごくありふれた書店員です。そんな自分にも裏の顔があるんです。(ごく一部の業界関係者をのぞいては)謎の組織「吉っ読」の総帥という一面です。

説明しましょう。「吉っ読」。「きっちょむ」と発音してください。当フリペの執筆でもおなじみのルーエ有志と吉祥寺駅ビル「ロンロン」内の「弘栄堂書店」さんの有志を中心に結成された酒呑み集団です。おっと間違えました。お酒はコミュニケーションツールにすぎません。

直近のプロジェクトを開陳いたしましょう。「吉祥寺の20冊ナツヨミ文庫カーニバル」と銘打ち、ルーエ・弘栄堂双方で夏の文庫フェアを盛り上げます。

私どもの野望は、ひとえに「本を通して吉祥寺をおもしろくする」というところに収斂します。簡単なことではないので、できることから始めていくしかないとおもっていますが、3年待ってください。「ブックタウン吉祥寺」の誕生を。

9号 なぜ「吉っ読」さんはベンツに乗らないのか? 寄稿者:岡田浩憲

吉祥寺で暮らす。大抵の用事は吉祥寺で事足りる。ひと月も電車に乗っていない事も。そのかわり、ぼくらは、夕暮れ時になると、文庫本片手に、吉祥寺の街という街を回遊するのだ。ぐるぐるぐる……。あっちのお店、そっちの本屋、こっちの本屋にそっちの本屋……そう、吉祥寺は本屋も多い。それでいて、それぞれの得意分野が違う。働いている僕らには、「ここは絶対負けない」という自負と「それは向こう行けばありますね」というあっさりした気持ち(笑)が同居している。狭い街だもの……。歩いていけばいいのだ。

「書店・吉祥寺」と誰かが言った。「書店共闘計画」とも。得意分野が違うものが手を組んだら、なにか面白いことが出来そうだ。 カリスマ書店員はいない。だが僕らには「吉祥寺」という看板がある。

本が好き、酒が好き。なにより「面白い吉祥寺」が好き。そんな集まりだ。吉祥寺の「いま」に、ぐっと来る本を紹介してみたい。しかしなんといっても、会の名前は「吉っ読」(きっちょむ)である。ちょっと風変わりでも、お酒を飲みすぎて誤読をして、失敗してもいいではないか。「愛される吉っ読さん」でありたい。とにかくはじまったばかり。吉祥寺好きの皆さんと、ゆっくり歩いていきたい。

8号 「どうしても」から二年半 寄稿者:どんぶりめし

北欧スローライフ具合が乙女殺しと言われる映画『かもめ食堂』にて、フィンランドにやって来たばかりのミドリが、主人公サチエにこう言うシーンがある。「来てやらないわけにはいかなかったんです、どうしても」サチエは答える。「そりゃ、どうしてもの時は、どうしてもです」「ですよね?」「来てやりましたか」「はい、来てやりました」「ようこそいらっしゃいました」

ルーエに来た時の私は、ミドリのようであったと思う。たくさん傷ついていて、いろんなことに絶望していた。猜疑心と劣等感の固まりで、自分で自分を悪い方向に追い詰めていた。泥沼にハマり、もがく日々。夜中にパジャマのまま逃走したり、泣きながらひたすらチョコを食べ続けたりと、かなりヘヴィーに七転八倒。でも、泣き腫らした瞼を冷やしつつルーエに向うと、不思議と落ち着いた。ルーエのみんなの優しさは、サチエの優しさによく似ている。余計な詮索はしないし、親切の押し売りもしない。だけど、自分が気に掛けられていることは、いつもちゃんと感じられた。それが、ただ、嬉しかった。

この度ルーエを卒業する運びとなり、筆をとらせて頂きました。二年半以上に亘り、私の居場所となってくれたルーエ、偶然流れてきた「仰げば尊し」に不覚にも涙してしまった。卒業式の時は、いつもウソ泣きしか出来なかったのに。

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8号 リングサイドで吠える 寄稿者:観客Å

コミック原作のドラマや映画が氾濫する昨今、好きな作品が映像として見られるとは本来ファンとして幸せなことなわけですが、一部で原作レイプと呼ばれるシットでファックな映像化が多いのも事実。タイトル借りただけとかお茶を濁したようなリメイクなら最初から作んじゃねえ。とまあ原作ファンとしては憤りを感じてしまうわけです。映画化、つまりリメイク作品というものは、原作を忠実に再現してまず最低ライン。テーマを理解しそれを引き立てるようアレンジして初めて別作品として評価の対象になると思うのです。少し前になりますが『プラネテス』(幸村誠、講談社)などはいい例。原作も面白いが、その意図を汲んでより引き立たせるような作りになっており、作品としての完成度が高い。原作よりアニメ版の方がいい、というファンも多いくらいである。

前フリが長くなったが『地球へ…』を読んだ。はるか未来の地球を巡る、人間と、「人間でないもの」のレッテルを貼られた人々との軋轢と戦いを描いたSF漫画の金字塔的名作である。かつて映画化されており、私は子供のころに見た。圧倒的なスケールに驚き、人々がおのれの命をすり減らして膠着した世界を変えようとする激しいドラマに衝撃を受けた。とまあ劇場版を見て感動した作品だし、さぞ面白いだろうと思って読んでみた。しかし少々肩透かし気味。もっと感動する話だったような?いや違う、劇場版の出来がよかったのだ。原作のテーマを理解し、それをよりクリアに際立たせるようアレンジしてあった。思い返せば感動をより濃く感じたのは劇場版オリジナルの展開があるところだった。悲劇的な最期をとげるカリナが主人公ジョミーの妻となっているところも、ライバル役キースが生みの親であり主人公サイドの最終的な敵であるグランドマザーに敵意をぶつける際の演出も、原作にはないものでありより心を揺さぶる展開だった。

これだ! これだよ! これがリメイクってものだ。断っておきますが決して原作は完成度が低くて劇場版に比べりゃ(ぴー)だと言っているわけではないのです。劇場版、ノベライズ、テレビアニメ版、すべてを生み出した根幹たる原作は紛れもない名作だ。ただゼロから物語を生み出す際には考えるべきことが多く、一人では目の届かない部分というものがどうしてもでてきてしまう。特に『地球へ…』のような非日常を描く作品では世界から何からすべてゼロから考えねばならず、時間的な制約もあいまって演出面で万全を期すことは難しい。後からすでに決まったストーリーを見て、演出面でアレンジを加えることの方がはるかにラクなのだ。

なればこそリメイクを作られる方々にはがんばっていただきたいと思うわけです。名作、人気作を踏み台にする以上、より面白く、より素晴らしい作品にすることはできるはずなのだから。テーマを理解し強調し、かつ客観的視点でひとりよがりにならぬよう、前情報のない観客に、より理解しやすいアレンジを加えてこそリメイクは名作となる。作り手にその能力がないのなら、せめて原作への愛くらいは用意していただきたいと思うのだ。もっと面白いものを見せてくれ!

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2号 いまブックス・ルーエにいる皆様へ 寄稿者:枡野浩一

こんにちは、歌人の枡野浩一です。加藤あいさんの隣で「短歌のルール五七五七七!」と叫ぶCMに出ていました。吉祥寺在住で、『きちぼん』(株式会社ラトルズ)という本にも参加しています。ブログ→http://masuno.de/blog/

さて、このたび宮藤官九郎さんに帯文(短歌!)を寄せていただき、『ショートソング』(集英社文庫)という、初の長編小説を出しました。童貞っぽさいっぱいの青春モノで、発売一週間で増刷が決まるなど、私の本とは思えないくらい売れています。まだひみつなんですが、同じ集英社で、なんと●●化の企画も進んでいます。

「歌人」として最初の本を出してから、今年でちょうど十年……。いま『ショートソング』を読んで、生まれて初めて短歌に興味を持ったという、若い読者が大勢いてくれるのは、なんとも嬉しいことです。ちなみに、手軽に読める文庫本短歌集が、3冊出ています。

■『ハッピーロンリーウォーリーソング』
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■『57577 Go city, go city, city!』
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■『君の鳥は歌を歌える』
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また、私のプロデュースで、 ■加藤千恵『ハッピーアイスクリーム』
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■佐藤真由美『プライベート』
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という女性歌人の短歌集も出ています。いずれも、ブックス・ルーエの二階、文庫コーナーにありますので(枡野浩一の本はサイン入りです!)、どうぞよろしくお願いします。

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