ON THE COMIC EDGE (藤岡佑)
25号 おひさしぶりです
確か小学五年生前後だったと記憶しています。
親戚の家の居間にある大きなこたつの上に載せられていた「スピリッツ」も、周囲の目を盗み恐る恐るめくったのが最初でした。何やら鋭い目をした椎茸が、「骨格コーナー」 なる標本の展示会場に、有り得ないはずの椎茸の標本をおもむろに置き、見学者を掴まえて、「どうなって いるか しっかり 勉強していけ」と言い放っている。
衝撃でした。それと同時にシチュエーションのしっくりさ加減に茫然とし、「ひだはどうなってるんだろう、まさか骨だったらアレだな」など想像しながら、味わい深い線で描かれた絵を前にひとり混乱しながらも、楽しんでいたことを思いだします。
「文藝別冊 総特集 吉田戦車」(河出書房新社)は、私が今までで最も尊敬し、愛してやまない漫画家のことを、あれやこれやと各方面の方々が褒め称えている本です。「伝染るんです。」風に言うと、「吉田戦車を愛する漫画家や作家や評論家たちの原稿が、今ひとつに。」といったところですね。
私にとって吉田戦車は「週刊少年ジャンプ」なのです。この人の漫画が私の王道なのです。 テンションを上げたい時は、数ある作品の中でも「武侠 さるかに合戦」(エンターブレイン)を選びます。ただ、待ち合わせ等の前にこれを読むとうっかり遅刻しかねませんので、持ち運びに便利な文庫版(同社刊)をおすすめ致します。しかし単行本の上下巻の巻の割れ方も絶妙で、そこがまた悩ましいところなのですが……ドンちゃ〜〜ん!!(栗山の親分) 非常に豪華な執筆陣の中でも、三宅乱丈の漫画(タッチまでそっくり!)とブルボン小林のゲーム漫画評論が抜きん出て面白かったです。私には。 ほとんどの方が指摘する、言葉に対する神経質なまでの真面目な姿勢で、今後もひねりの効いた漫画世界(麺世界も)見せ続けて頂きたいと思います。
これからもお体に気を付けて、我々吉戦ファンを沢山楽しませて下さい。 「吉田は俺が守る!!」(by榎本俊二 総特集P43より)一読者として!(敬称略)
エンターブレイン
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15号 ごはんが食べたくなる本格SF
まだまだ寒いっすね。藤岡と申します。先日、初めて自分で漬け物を作りました。適当にちぎったキャベツと薄くスライスしたセロリを、塩水で漬けたものです。細かく刻んだにんにくと七味唐辛子も混ぜて、よーくもんで重しをのせて冷蔵庫に入れ、一晩たって、食べてみました。大成功でした。お給料日前の心強い仲間がまた一人、現れた瞬間でした。七味が正解でしたね。では『イムリ』を。
この作品は「一部の特別な階級にのみ許された、他人の心(意識?脳?)に侵入(共有)することで世界をコントロールする人達が、激しい権力争いを繰り広げる」と、中学生ばりの表現方法で言うとこういった内容で、それはもうゴッツゴツのファンタジーですよ皆さん!!と思わず前のめりになってしまう、第3巻が1月末に発売されたばかりなのにもう次の巻を前のめりのまま待ちわびている有様です。
三宅氏の描く絵って、「おいしい」顔だったり、「うれしい」や「悲しい」顔だったり、感情を顔にあらわすのが本っ当に素晴らしいなぁと思います。最近だと「秘密の新撰組」のトシや藤堂の表情がそうですね。完全にこちらも釣られちゃってますもの。
空気も含めて、「おいしそうにものを食う」場面を見つけるとイコール名作の匂いに感じてしまう食いしんぼうの私であります。
14号 「行間」ならぬ「空白」を読む愉しむ
寒いっすね。皆さん、カゼ、ひいてませんかぁーーーっ!!(リングの上で)藤岡と申します。今年もよろしくお願い致します。
いきなり昨年末に戻りますが、「放浪息子」待望の7巻が発売になりました。女の子になりたいニ鳥くんと、男の子になりたい高槻さんと。中学生になっても、いろいろ悩んでます。いいですね。漫画を読んでて何か私まで、「しっかりしな!」って言いたくなってくる・・・。そんな年頃なんですよね。今思い起こしてみると。登場人物それぞれの心の動きが非常に丁寧に描かれていて、ほのぼのとした気分になります。
タイトルにも書きましたが、私は志村作品の最大の武器は「空白を読ませる」ところにあると思います。この空白はあくまで「立体」なのでしょうね。スカッシュのコートのような。真っ白(黒・グレー)な防音室のような。そこで、そっと声がつぶやかれている感じ。何だかよく分からなくなってきましたがイメージとしてはそんな感じです。心地よい緊張感と滑らかな絵。志村作品にとても色気を感じる私です。「青い花」3巻も今からとても楽しみです。
13号 自称ユニフォーム観察家
年末年始の出費に備えて、好物のマルタイ棒ラーメン九州味を備蓄し始めた藤岡です。
今日は12月1日・・・。小笠原が戻った後の鹿島はすごかった。・・・。それにしてもあまりに劇的な10冠の瞬間でしたね。05年のG大阪初優勝の時といい、ここ数年のJ1は最終節まで見る者を浮き足立たせてくれますね。来季になったら鹿島のユニホームの星が大きな1コになるのは間違いありませんね。でも、リーグ優勝とステージ優勝(現在は1シーズン制)とリーグカップの星を一緒くたにカウントすることに、私は少なからぬ抵抗を感じます。優勝は優勝なのさ、堅いこと言うもんじゃないよと思われるでしょうが・・・。
私はカッパ社制のまるで自転車選手のようなタイトなユニホームが好きなのですが、今季は札幌、東京VともにJ1昇格が決まって関係者の方々はさぞかし喜んでおられることでしょうね。
今年も1年間通していろいろな方々に大変お世話になりました。この拙い文章をご覧になった皆様方のご健康と、ジュビロ磐田イレブンが元旦の国立競技場で笑顔で優勝カップを掲げていること、そして山本浩解説委員の実況を来年は1試合でも多く観られることを願って。よいお年を!!
12号 みんな、集まれ!芋を煮るぞー!!
最後に「検索」ボタンを「カチッ」とやるCMの商品は、できるだけ買わないよう心掛けはじめた藤岡です。結構、難しいです。
さて。秋の色も濃くなって参りました。だんだん鍋の出番も増えてくる頃だと思います。鍋って素敵です。野菜とか肉とか魚とかを切って、味つけしたつゆで煮こめばOKなんですもの!!以前住んでいた仙台(宮城県)や山形県では、ちょうど今頃が芋煮会シーズンで、キャンプ場では(午前中から酒を飲みながら)芋煮鍋を囲む姿を目にしましたが、どこでトイレを済ませるんでしょうか。不思議です。
山形風はしょうゆベースに牛肉、仙台風は豚汁の芋がじゃがいもから里芋へ変わっただけなので(暴言!)最初は不思議な食感に感じられました。コンビニの店先に薪が束になって積まれているさまは、きっと全国でもこの辺りだけではないでしょうか。旅行中に見かけた折には、お土産に一本いかがでしょうか。防災用に!!(半分本気) きっと今年は、球団史上初・4位フィニッシュの楽天イーグルス(来年はクライマックスいげっちゃわ)や、5年ぶりのJ1復帰へ善戦中のベガルタ仙台(仙台スタジアムの「ぎゅっと」感は恐らく国内指折り、日立台にも負けない!)の話題でわいわいやってるんでしょうね。 ああ、うらやましい。
11号 アウエーじゃなくてアウェーって言え
こんばんは、先日、手書きPOPをつけて大プッシュした某コミックが、東京都の有害図書に指定されました。面白いのに。でも、がっかりなどしていません。出る杭は、打たれる。「絶対に負けられない戦い」なんて、本当はありっこないんだ。
中学・高校とサッカー部に所属しておりまして、観るのも実際にけるのも大好きなのですが、テレビの実況者の拙いアナウンスにはしばしば閉口させられます。テレビなんだから、シュートの一つや二つぐらい、黙ってたってこちらは見えてるんだから分かります。あと、ゴールシーンが必要以上にやかましい実況、民放特に地上波に多すぎです。雰囲気を伝えたいのなら、歓喜に湧くスタジアムの音声で充分だと思うのですが…。
もう一つ特に若手実況者に注文をつけるとしたら、あまりに己が実況することだけに集中し過ぎず、もっと解説者と会話することを心がけては如何でしょう。カメラの映像は全体の一部でしかありません。会場でしか感じ取れないものをテレビの前の我々にもっと伝えて欲しいのです。
考えてみると、意外、というか元からそんな気もしていたのですが、報道に似ていますね。情報の担い手はまず、自分が落ち着け。って結論で、がんばれニューカッスル!
10号 ちひろ
私は、エロが大好きです。のっけからすいません。前にどこかで見たか聞いたか判然としないのですが、「オルガズムは小さな死だ」というフレーズを知って、えらいびっくりしたのを覚えています。そう言われてみると、確かにしっくりくるのです。萩原舞(女優)の座右の銘に「人生一生暇つぶし」という言葉を見たときも、脳がしびれる思いがしました。かなり背中を押される思いがしました。
そんな流れで、ナイス復刊!と秋田書店さんにガッツポーズをせずにはいられません。思わず力が入っちゃうんですが、この作品に、「リアリティー」を求めるのは、ちょっとナンセンスな気がしました。レディコミじゃあないんですし。第一、作者男性ですし。でも本当にため息が出るんですが、安田弘之は本当は女なんじゃないのか?と疑いたくなるほどモノローグが、ちひろが決して、風俗嬢という設定だからという訳じゃなく、まるでひとりであることを楽しんでいるようにも感じられるのです。「痛い?痛いよね」「うん 痛ぁい★」
「月に住んでんのはなぁ 悪魔だよ」こんなこと子供に言ってみたい……。あと最後が不思議と高野文子っぽかったです。漫画王国新潟。負けるな新潟!! 変な結び方ですが、この本は私の宝物となりました。
9号 エハイク
しばらく旅に、出ていました。旅先で出会った子どもたちに、吉田戦車の「エハイク」シリーズ(フリースタイル)を読み聞かせ、どう反応すればいいのかわからず困惑気味の、子どもたちの顔を見ていると、自分には何ができて、何ができないのか。そして、これから自分は何をしていけばいいのか。それが見えてきたような気がします。全部、嘘ですけど。
でも、「エハイク」自体の面白さは、他にちょっと例のない形だけに、子どもに軽いトラウマを与えるにはぴったりですね。作者の字余りに対する神経の使いっぷり(「あとは明日/おでんをすする/ボジョレヌボ」)や新しい季語(「銀行に/秘密振り込み/秋スイス」)も、見ものと言えるでしょう。
ここで、私の一番のお気に入りエハイクと、それにつけられた評を、出版元のフリースタイル様に無断で、ご紹介します。
長そでを 隠れ着る小野 わらう和田
《評》きびしい残暑から一気に肌寒い秋となった。なったからといって、女子供のようにすぐに秋物を身につける小野を、和田はわらう。気温は18度。小野は恥じる必要はないし、和田はたぶん風邪をひく。
絵をお見せできないのが残念。2冊目の「悪い笛」掲載ですので、気になった方はそちらで是非ご確認下さい。では。
5号 好みのタイプは興福寺阿修羅像
藤岡と申します。毎度ありがとうございます。先日、東京ディズニーランド・シーに、中学校の修学旅行以来(青森では小学校で北海道、中学校で東京へが一般的なようです)に行って参りました。家族全員ではしゃいで参った訳ですが、特にシーを一日中歩いてみて肌で感じたのが、「本気(ガチ)で来たな」この一言に集約される、オリエンタルランド社の本気度でした。アトラクション毎に、舞台となる地域の建物などの特色や、時代背景がよく調べられていて、一日に何度「よく出来てるなあ……(ため息)」とつぶやいたことか。コンクリートに見えませんよ、岩とか。ランドにあるウォルト・ディズニー氏とミッキーマウスが手をつないでいる銅像を前に思わず胸が熱くなったりもしましたが、人々はそんなことより、近くの記念ブースで、愛娘にてろてろとしたドレスを着せ、思い出作りに余念がない様子でした。パレードで遭遇した山車(悪意ナシ)から漂うかぐわしい香りには少しビビりました。
紺野さんだったら、一体どんなリアクションをとるのだろうか……。意外とはしゃいでいそうな気もするが……心の中で。
安田弘之の『紺野さんと遊ぼう』(太田出版)三部作の主役、紺野美雪は女子高生。何故か常にセーラー服姿で行動しています。その紺野さんと正しくただ遊んでいるだけの漫画なのですが、私はこの漫画が大好きです。だって、メッセージとかストーリーとか、そんなもん、全然関係ないんですもの。「セーラー服って……いいよね」これのみです。例えて言うなら「和風精進エロス(帯文より)」。友人、八木沼瞳と《メンチ》藤枝君子との倒錯プレイの数々。八木沼さんとはしょっちゅうお互いの匂いをかいでるし、突然メンチを哺乳瓶であやしはじめ、最初は戸惑うメンチもだんだんその気になってきたり……。おかしいって。
毎巻末に、うさぎの着ぐるみ(風。着ぐるみかどうかは考えちゃいけないことになっている)と紺野さんが遊んでいる(デモンストレーション)のですが、きっとこれがその後「ラビパパ」(エロティックスfにて連載中)のパパとみゆきママになるんですね。この漫画も、パパ似のエロ息子、ラビ彦が通う保育園には巨乳で男運のない先生や、子供に向って気持ちよく中指を立て暴言を吐く先生や、アル中で一年中同じ姿勢で動かない園長先生(園児にお供えされたりもする。お供え物はもちろんお酒)がいたり……。うらやましいですね。
『ショムニ』といい『先生がいっぱい』といい、変な漫画好きにはたまらない漫画家、安田弘之。改めて今度は四コマの作品もしっかりと目を通さなきゃな、と思っている次第です。
4号 ワンパクでもいい、たくましく育ってほしい
1月17日に、いとこが男の子を出産致しまして、次の日、そのいとこから、安産だったことを伝える内容のメールが、赤ん坊のぷくぷく丸っこい寝顔が写された写真と共に送られてきました。
改めてこの場を借りて、おめでとう。いろんなことが君を待ち受けているけど、常に誠実に、そして、ユーモアの精神を忘れるなよ。そうすればきっと、うまくいくさ。私はずっと君の味方でい続けたいと思っています。どうぞこれからよろしくお願いしますね。今の時点(1月22日)ではまだ男の子の名前はわからないのですが、できればあて字(特に外国語に漢字をあてるもの)は控えてもらいたいものです。と、ひとりで勝手に思っております。
無責任なことを書きますが、子どもの名前に困ったお父さんお母さんは、大学の名誉教授のお名前から拝借する、ってのは如何でしょう。……何だかあて字とさほど変らない気もしなくはないのですが、こっちのほうが何となく説得力のある名前がつく可能性が高いように思えてきて……。偉いお坊さんから一字頂いてみたりするのもよいかと思われます。
ごあいさつが遅れました。エッジコミック担当とビームコミックス担当の藤岡祐(たすく)と申します。ちなみにこの名前は、私の両親が「賢い人間になるように」と名付けた名前だそうです。ありがたい名前だと思っているのですが、現段階では完全に名前負けの状況ですので、これから巻き返しを図っていきたいところです。
せっかく書店で働いているのだから、本でも贈ってみようかと、まず選んでみたのが、おなじみアンゲラーの『すてきな三にんぐみ』(偕成社)と、清川あさみデザインの『幸せな王子』(リトルモア)の2冊です。前者は赤ん坊用で、一緒に本を選んだ私の妹とも話したのが、「これ、頭の中で江守徹がナレーションしているふうに読むと、臨場感抜群」ということです。薄ら笑いも浮かべるとなお効果的ですね。そして後者は、漢字の多さからむしろお母さん用と呼ぶべきでしょうか、いや、読み聞かせが大前提の絵本であれば、これだって充分子どもの役に立つはず!と思って買い求めてみた訳ですが、果たして子どもの好みに合いますかどうか。「絵本のおじさん」計画、ここにスタート致しました。
漫画でいうと、岩岡ヒサエは子どももお母さんも喜んでくれそうだなあ。『ゆめの底』(宙出版)は是非ともおすすめしたい1冊ですね。男の子女の子関係なく。私は眠っていると夢のなかで自分が生きているのか死んでいるのかわからなくなることがたまにあります。あと、よく空を飛んでいるというか、ゆっくり浮いているんだけど最後は必ず地面に着地して、足元には蛇がうじゃうじゃいたりとか、某主体思想国家や、はたまたはっきりと目に見える幽霊に殺されそうになったり……。岩岡氏が描く「フシュー」とか「シュバババ」とか急に毛が「ブワッ」と生えてるところ(『火星マンション』(小学館)で顕著に表れる)が、独特のふわふわした絵にぴったり合っていて私は大好きです。ぜひ一度。それではまた。
3号 結果と抱負
こんばんは。心にピストルと花束を持つ男になりたい男、エッジコミック担当の藤岡と申します。
第9回みうらじゅん賞が発表されましたね。「不気味丸出し」二本松の菊人形や、いつもニコニコしながら食べる姿に「(胸が)スーッとした」ギャル曽根ちゃんの受賞も大変おめでたいのですが、やはり私が印象に残ったは、高見沢俊彦氏や大竹伸朗氏の「キープオン」な姿勢に対するMJの賞賛でした。童貞のピュアな感性を大切に持ち続けよと説く氏ならではの選出という気が致します。
そう、ピュアな気持ちをキープオンさせつつも、よりエロく、よりグロい棚を目指すよう常に心掛けておりますが、これ、下手をするとどん引きされかねない意気込みなので、少しずつ小出しにしていきたいところです。そして、気がついたらここだけ棚から陽炎が立ち上がっているようになっていたらいいなぁと、思っております。
エッジコミックに臨む時、私は常に驚かされたい欲しています。薀蓄めいた台詞は野暮ったいだけです。実のところ、本当はもっと中高生に読んでもらいたいのです。読んだ人の価値観に少しでも影響を与えられる本を、より多くそろえることをモットーに2007年も頑張っていきたいと思います。〈エッジコミック 2006年売上冊数順上位10冊〉(1月2日〜12月26日)
●ほしよりこ 『きょうの猫村さん』2巻(マガジンハウス) ●ほしよりこ『きょうの猫村さん』1巻(マガジンハウス)
●西原理恵子 『毎日かあさん3 背脂編』(毎日新聞社)
●吾妻ひでお 『うつうつひでお日記』(角川書店)
●浅野いにお 『虹ヶ原/ホログラフ』(太田出版)
●オノナツメ 『リストランテ・パラディーゾ』(太田出版)
●吾妻ひでお『失踪日記』(イースト・プレス)
●西原理恵子・母さんズ 『ああ息子』(毎日新聞社)
●諸星大二郎 『グリムのような物語 トゥルーデおばさん』(朝日ソノラマ)
朝日新聞出版
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●伊藤理佐『女いっぴき猫ふたり』(双葉社)
視覚に直接訴えることで、読み手と細かな部分までイメージを共有できるのが、漫画の長所でもあり短所でもあると思います。
今年ぶっちぎりで1位の「猫村さん」は、言わずと知れた、家政婦猫・猫村ねこが犬神家の事情にいろいろと首をつっこんでいく漫画なのですが、この漫画、1コマ当たりの情報量がとても少ない!しかも鉛筆だ!!でもかわいいよ猫村さん!!やり切れないときの顔を洗うようなしぐさとか、「ちょっと失礼」といきなりゴロンと寝転がるところとか。動きがたまらん!!これが丁寧に細かく描かれていたら、今みたいに「かわいい」って思えるだろうか。1ページに2コマずつ。コマ割りなどとは無縁なので、まるで紙芝居を見ているような気にもなってきます。既成の概念・ステムからは産まれてこなかったであろう名作ですね。ついでにマガジンハウスさんには魚喃キリコの『blue』の重版も熱望致します。講談社さんには岡崎京子『くちびるから散弾銃』を!!難しい願いとは思いますが……。それではまた。おやすみなさい。
2号 高野文子が好きです
こんばんは。この間吉田戦車の漫画を物色しに中野へ行き、結局『月刊永作博美』と『月刊つぐみ』を買って帰ってきた夜型人間の藤岡と申します。『ぷりぷり県』復刊熱望!! がんばれ白鳥百合子!!
以前1階サブカルコーナーで行っていたフェアの流れで、雑誌『ユリイカ』(青土社)の漫画関連のバックナンバーを置き始めました。こちらはフェアではなく、しばらくひっそりと置いてみようかと思っているところです。「楳図かずお」「西原理恵子」「黒田硫黄」「作家リスト」「ギャグまんが」「マンガ批評」といった感じで、おなじみ夏目房之介先生や伊藤剛先生などが漫画の読み方に幅と奥行きと心構えを教えてくれる解説をしていて、ははあ、こういう見方・考え方があったかと頷くことしきりといった内容となっておりまして、商業高校卒の私には難しい単語や表現も頻繁に登場するので、電車に揺られながら気持ちよく読んでいると、必ず睡魔が襲ってきます。でも頑張って読み進めようとする。目が半分白目をむく。口が半開きになる。よだれを垂らしそうになる。慌てて拭って周りを見回しひとり恥ずかしい思いをする。それがユリイカ・クオリティ(ほめ言葉ですよ)。
しかもわたくし、今頃になって「高野文子特集号」(02年7月号)に夢中になっている有様……。もっとも、エッジコミックには古いも新しいもありませんから、特に気後れといったものは無いのですが。名作「奥村さんの茄子」初出バージョン(文藝春秋『COMICアレ!』94年5月号、『ユリイカ』注)の再録、面白かったなあ!!テンポ良い説明とスピード感のある初出に比べ、スピードは多少ゆっくり気味でもページ数が多く、ディテールも細かく豊かな単行本(「やしのみ洗剤チュー」シーンもこちらのみ)、といったところですかね。読み易さは人それぞれで、言うまでもなくまだの方には両方読むことをおすすめしたい!それだけ、私の中で大事にしていきたい漫画です。
最近出た『AERACOMIC』(朝日新聞社)に浦沢直樹のあとに高野文子のコーナーが載っているのを発見し、「あれ、そういえば『ユリイカ』で大友さんと対談した時に、『浦沢直樹の描く漫画の息がつまるようなスピード感が苦手だ』って言ってたな。これは意図的な配置なのかな」などと考えながらニヤニヤしたり……。これからもマイペースを貫いていって頂きたいものです。私も気長に既刊本を読みながら待っていたいなと思っているところです。
それにしても何故、新潟県出身の著名な漫画家がその人口に比べてこれほど多いのだろうか、不思議でなりません。高野文子、近藤よう子、魚喃キリコ、安田弘之、古泉智浩……。水島新司や小畑健まで!!やっぱり、あれですか!?コシヒカリ?それとも単なる偶然なのか。謎は一向に解けぬまま。手掛かりさえもつかめておりません。情報求む!!それではまた。おやすみなさい。