ラノベーション革命 (芋福)

最終回 零崎人識の人間関係

本(主にマンガ)が溜まり、部屋が手狭になったので、在庫整理を兼ねて、本を売りにBオフへ。買い叩かれると聞いていたので覚悟していったが、噂通り凄かった。ブリ○チを30冊くらい持っていったのだが、総額650円!1冊400円の本が10円〜30円に、ヤバイネ。それを100円〜250円と約10倍の値段で売るのだから。そりゃあ、儲かるはずだ。あくど、いやいや商売がうまいね、Bオフは。でもよく考えたら、駅前にあの規模の店を出して儲けを出さなければいけないのだから、それくらいやって当たり前。以前、ナ○トを50円で買ってくれたBステーションの閉店は自然の摂理というわけか。品揃え良し、朝3時まで営業と、重宝していた良い古書店だったのにもったいない。

話はずれるが、下北のマックが2年半ほど前に閉店していたという事実を最近知り、唖然。何がショックって閉店の事もそうだが、あんなに好きで毎週通っていたのに、もう2年以上行ってなかったことが衝撃的でした。店主の体調がよろしくなく閉店、とのことらしいのだが残念でしょうがない。最後に行ってから3年は経ってないので、そのあと数ヶ月で閉店したのか・・・くやしいな。また一つ下北に行く理由が無くなってしまった。

さて、本を紹介せねば。西尾維新の新刊が出ましたね。4冊同時に。良くも悪くも読者泣かせというか。そりゃ買っちゃいますよ、結構良い値段になるけどさ。各々作風が違うので好みが分かれると思うが個人的には「無桐伊織との関係」がおすすめ。一番ラノベ的で読み易い。軽くネタバレるが、時間軸はネコソギラジカルの想影真心戦後。キャラ同士の軽快な掛け合いが魅力的で、特に前半の人識、伊織、潤の会話はイチオシ。西尾作品の会話劇が好きな人にはたまらない、抱腹絶倒間違いなしの一冊です。

最後に、今回をもって、この連載を終了することになりました。度重なる締め切り破り、そして原稿落ちに編集長の怒りが爆発(笑)加えてラノベ紹介してない回のほうが多いという事実がバレ、タイトルに偽りアリということで打ち切りという方向に相成りました。応援してくれていた方がいるかどうかはわかりませんが、申し訳ございませんと謝らせてください。もし次回があるのならば、もっといいものをお届け出来るように努力したい所存であります。それではまた、お会いできることを祈って…

零崎人識の人間関係 戯言遣いとの関係 (講談社ノベルス)
西尾 維新
講談社
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32号 波打ち際のむろみさん

川本真琴の新アルバムが出た。と聞いて、即タワレコへ。しかし売り切れ。ショック!でも、自分の他にも根強いファンがまだいたことがちょっとうれしい。とりあえず、シングルコレクションの方を押さえ、トボトボと家路に。知らない曲が入っていたのでそれでテンションがあがる。

しかし、いつ聞いてもいい。声も好きだが、歌詞がまたいい。何かの記事で川本真琴ほど自分をさらけ出して歌詞を書いている歌手はいないと書いてあったが、まさにその通りだと思う。「1一2」のかップリングの「1」という曲がはいっていてまたテンションがあがる。これが一番好きかも。でも「タイムマシーン」もいいし「やきそばパン」「ひまわり」「ピカピカ」「桜」「ドーナツのリング」もいい。挙げるとキリがない。ジャケを見てびっくり変わってねー。てか前よりかわいくなってる。やべっ、テンションあがりっ放しですよもー。

ファーストアルバムが出たくらいが高3ぐらいで、受験勉強のお供に、受験で上京したときもテープに入れて持ち歩き、何か当時は毎日聞いてた気がする。もちろん今もiPodにはいってるし、思い入れが強すぎる歌手です。

さて、本を紹介しないとね。「ガンダムUC」が文庫化されたんで、読んでみました。逆シャアから3年後ぐらいなので、知ってる単語が結構出てきて、ついニヤニヤしてしまいます。「レンタルマギカ」はチョイと展開速すぎかなと。もうチョイゆっくり新体制をみせて欲しかった。「アスラクライン」はきっちり終わらせた後の短編はどうかと思っていたが、巧いことまとめられていたので満足です。ただ、今巻ばかり裏面が前デザイン仕様にしても、前巻1冊だけ違うデザインになってしまうので、いかがなものかと。「デュラララ!!」はセルティがかわいいにつきます。そうだ漫画を一冊。

「波打際のむろみさん」博多弁の人魚むろみさんと釣り少年拓朗のやり取りが楽しい波打際コメディ。なんか笑ってしまう系の漫画で、一発芸名古屋城に吹いてしまった自分が悔しい。腹が減ればミミズを貪り、酒を飲めば悪酔いし、恋愛は引きずるタイプとヒロインとしてはどうかと思うむろみさん。精子かけてはどうかと思います。笑ってしまったけど。

波打際のむろみさん(1) (講談社コミックス)
名島 啓二
講談社

30号 西尾維新『化物語』

ダジャレ、韻を踏む、などの言葉遊びが好きである。当て字、造語、語呂合わせなんかもいい。親父ギャグなんかは笑えないがほうと感心してしまう事が少なくない。若者の言葉(なんかおっさんくさい言い回しだな。実際若くはないけど)も面白い。こないだ見たTV番組では、すごいを表す言葉が7種類ぐらいあるらしく、マジ→超→超絶→ガチ→鬼→神あとなんだっけかな?とにかく多い。肉離れのことをミートバイバイというらしいし、よくもまあ、色色と思いつくもんだ。 そこで今回は、西尾維新である。名前からして回文だし。いまさら感はあるが、この人は言葉遊びの天才だと思う。加えてキャラ同士の掛け合いに関しては他作品から飛び抜けて楽しい。そんな西尾維新の作中にはうまい遊びが多々ある。2009年大ヒットした「化物語」を例に挙げてみよう。

作中、言葉の最後に「勇気」をつけるとなんでもポジティブに捉えることができる、というネタがあり、それが絶妙だった。

「恋人に嘘をつく勇気」→なるほど、普通に嘘をついただけなのに、まるでそれがやさしい嘘のように聞こえる。

「仲間を裏切る勇気」→結果として裏切ってしまったのに、まるで仲間をかばったかのように思える。

「加害者になる勇気」→おお、単に迷惑をかけただけなのに、自ら汚れ役を買った男の中の男のようだ!

「痴漢をする勇気」→卑劣極まりない犯罪を犯しているのにもかかわらず、なにか他の崇高な目的があり、やむを得ず行為に及んだのかのよう?

「怠惰に暮らす勇気」→何もせず無為に時間を過ごしているかのように聞こえるが、あえて、その境遇に身をやつし大儀のために貧窮に喘いでいる様だ! なるほど、うまいこと考えるもんだ。

では最後に私も一つ・・・・ 「締め切りを破る勇気」→きっと芋羊羹は、なにかやむを得ない事情があって毎回提出が遅れているんです。許

化物語(上) (講談社BOX)
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西尾 維新
講談社
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28号 神様のメモ帳

おがきちか「ランドリオール」が面白い。一迅社から出ているファンタジー漫画で、現在14巻まで刊行中。何を今更という方もいるかもしれないが、最近知ったんです。こんな面白い作品があるということを。たまには新規開拓せねばと思い、漫画喫茶で3巻まで読んだところで、ドツボにはまり即全巻購入。こんなにはまったファンタジーは「デルフィニア戦記」以来。自信を持ってオススメできます。

さて、では本題に。今回は杉井光「神様のメモ帳」。まず帯の「ニート探偵」という言葉に惹かれました。杉井作品は「ばけらの」しか読んでいなかったので、これも笑い9シリアス1くらいのコメディ色の強い作品なんだろうなあと思い、気楽に手に取りました。率直な感想は、杉井光ってこんなにすごい作品が書ける作家だったんだという驚きがありました。美少女ニート探偵という時点で安っぽい萌え小説と思いきや、しっかりした世界観、計算された展開、そして圧倒的な文章力。素直になめててごめんなさいと思いました。 前半は笑える小ネタやニートたちの自虐ネタ、小気味よい会話でテンポよく進んでいくのですが、後半はまあ探偵が出てくるので、当然事件が発生し、前半からは想像もつかない重苦しい展開になっていきます。結末はここで言うのもなんですから詳しくは言いませんが、最後まで読んでソンは無い作品です。

神様のメモ帳 (電撃文庫)
杉井 光
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27号 行間詰まってます

さて、先ずは最近「宮原るり」が熱い。4コマまんが「となりのネネコさん」「みそララ」「恋愛ラボ」などを書かれてます。1つ1つの4コマを起承転結でオトスのとそれをつなげてストーリーを展開していくのが抜群にうまい方だと思います。昨今、キャラクターにあからさまな特徴付けをするマンガが多い中で、キャラクターの個性をきちんと描いてくれているマンガで、キャラ同士の掛け合いが本当に楽しいです。いい意味でアクが無いので、あまりこの手の4コマを読みなれていない人にもおすすめです。

次は、「好色哀歌元バレーボーイズ」。「工業哀歌バレーボーイズ」、まさかの続編です。ノリは前作と一緒なのですが、エロ分が抑えられていて、谷口の就職難、宮本と虎子は別れてるし、赤木は両親の仇を探してるし、なかなか渋い感じになっています。ま、基本は変わらないのですが・・・。何巻かの帯で「学生時代みたいに、バカやってるだけじゃ、済まねーよな、やっぱ・・・」と書かれているのがこの作品をよく表してる気がします。 個人的には好きなのですが、絵も話も人を選ぶマンガなのであまりオススメしませんが、いかにもヤンマガって感じが好きな人、前作を読んでいた人は、ハマルはずです。

では最後は、タイトル変えたほうがいいんじゃない?というくらい、最近ラノベの紹介をしてないので、ラノベをば。「レディ・ガンナー」の久し振りの新刊はうれしいが、今回は「アリアンロッド・サガ」を。前のシリーズも楽しかったが、サガになってから俄然おもしろい。3つのキャンペーンと1つのノベルが同時に進行していて、時間軸の差はあるが、キャラクター、ストーリーの交差があり、前作からの引き続き登場キャラありと色色楽しめる要素ありです。同時進行、新要素のせいか、前作よりストーリーに芯が通っていて、引き締まっている印象もあるが、かといって雰囲気が重くなっているわけではないのが不思議です。すべてのキャンペーンに参加しているきくたけさんの混乱っぷりも必見です。まだ、各シリーズ1,2巻しか出ていないので、今ならまだ追いかけ易いはず。とりあえず、暫くは平積みしている予定なので、興味のある方は3階へGO!てことで。

アリアンロッド・サガ・リプレイ・デスマーチ  死んで花実が咲くものか! (富士見ドラゴン・ブック)
田中信二/F.E.A.R.
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25号 電波的な彼女

セロリがうまい。そのままでも、漬物にしても、煮込みに入れてもうまい。30手前にして、セロリに開眼。きっかけはシラキヤのセロリの浅漬け。これさえあれば他のツマミはいらねってくらいはまってます。でも、自分で漬けてもあの味が出せねえ。さすがプロ。ちょっとくやしいです。

さて、今回は片山憲太郎『電波的な彼女』。昨年、アニメ化した同著の『紅』とは、社会背景、登場人物の一部がクロスオーバーしています。不良少年の柔沢ジュウは堕花雨と名乗る少女にある日突然忠誠を誓われる。少女の奇怪な言動に振り回されながらも、その真摯な言動にしだいに存在を受け入れて行く。しかし、巷を騒がせる連続殺人にクラスメイトが犠牲になってしまい、ジュウは雨に不信感を抱くようになるが・・・。丈夫なだけが取り柄の主人公・柔沢ジュウが、前世でジュウと主従だったと言い張る堕花雨、快楽主義者で刃物を持つと雰囲気も口調も一変する斬島雪姫、極度の男嫌い円堂円らといったタイトル通りのキャラに助けられ、無差別殺人犯を探していくサイコサスペンス的なお話です。その他の登場人物も大抵ヤンでます。私は紅を先に読んで、イマイチだったので他はいいかなあと思っていたのですが、某営業さんがやけに押すので、読んでみました。ラノベミステリというよりは一般文芸に近く、サイコな心理描写や暴力シーンは後味が悪くないくらいにダークで、個人的には好きな部類です。1巻読むと次次と読みたくなるので、まとめ買いがオススメです。今のところ3巻までしかでてないので、早いところ続きが読みたいところです。

電波的な彼女 (集英社スーパーダッシュ文庫)
片山 憲太郎
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22号 ばけらの!&俺の妹がこんなに可愛いわけがない

ども。先日マンガ喫茶でドラゴンボールとワンピース読破。何度読んでも、チャオズの自爆とチョッパーのエピソード、ゴールデンメリー号との別れは泣ける。何だろう。年を取るにつれてなんだか涙もろくなってきている感じがする今日この頃。いかがお過ごしでしょうか。そういえば先輩がアカギが実写映画化決定、エキストラ募集中してるって、言ってたけど、エキストラはザワザワしてるのかな?ザワザワしててほしいな。

さて、オススメって程ではないけど最近やけに売れてるので、「ばけらの!」(杉井光、絵・赤人、GA文庫)と「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」(伏見つかさ、絵・かんざきひろ、電撃文庫)を読んでみた。 「ばけらの!」は、とあるライトノベルレーベルからデビューした主人公、杉井ヒカル。

彼を取り巻く先輩や同期の作家たちはみんな美少女だが妖怪だった、という設定。と、ここだけ聞くとありがちな感じだけど、この作品の登場人物のモデルは実在するラノベ作家らしい。ネットでも騒がれているが、営業さん情報で確かなのは、杉井ヒカル→杉井光、葉隠イヅナ→香辛料の人、男爵ウーノ→Bが三つの人、エム→ご愁傷様な人、などなど様様な人がモデルになっているらしい。性格もそのままかどうかまでは知らないけど・・・ちなみに、作中に出てくるママネコも実在し、某フジミショボウにて飼われている?らしい。 なんか身内ネタが多すぎて、置き去りにされてる感が否めないが、読み物としてはなかなか笑えました。杉井さんは最近色んなレーベルで書かれているので、他の作品も呼んでみようかな?

ばけらの! (GA文庫)
ばけらの! (GA文庫)
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杉井 光
ソフトバンククリエイティブ
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「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」やたら長いタイトルだな。雑誌の読者モデルもしているような美人だが隠れオタクな妹とごくごく一般人な兄。平気で兄を見下しているような妹、そして兄もその態度が気に喰わず、ここ数年まともに口を交わすこともなかったが、ある事がきっかけで、妹がオタクだということがわかってしまう。そしてそんな妹から“人生相談”をされるはめに・・・。

オタク(妹)の生態を見事に描きつつ、一般人(兄)の目線でばっさり切ってきます。一般人(兄)がオタク(妹)に理不尽に責められてるシーンや、妹の繰り出す無自覚でたちの悪いボケと兄のキレのある正論の応酬が次第に収集がつかなくなっていくのも笑えます。加えて妹の情報源。そこかよっ!とつっこみを入れたくなります。正反対なキャラゆえに絶妙のコンビネーションをもった兄妹。最後は綺麗にまとめていたのも、好感が持てます。ただ大変品薄なのが残念。入荷しても、3日と持たずに売れ切れてしまいます。2巻が出る前には積んでおきたいところです。 とりあえず、「ばけらの」の方はまだ在庫があるんで、興味を持たれた方は3階までどうぞ。

俺の妹がこんなに可愛いわけがない (電撃文庫)
伏見 つかさ
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20号 文学少女と死にたがりの道化

はい。ガノトトスが倒せず、最近サボりがちです。ソウコウしているうちに「サモンナイト2」が出るので、多分そっちに専念しそうな今日この頃、いかがお過ごしでしょうか?

各社の夏100が出揃い、そういえば、今までいわゆる名作と呼ばれる作品をあまり読んでなかったことに気付き、ルエ伝編集長に進められるがまま手に取ったのが『人間失格』。故郷の著名人であり、入水した近所に住んでいるという縁もあったのに、恥ずかしながら初・太宰です。感想。駄目だなあ。俺も大概駄目だけど、この主人公はホント駄目だ。タイトルどおりのお話です。自ら道化を演じていたり、自意識過剰な点はすごい共感がもてました。編集長の「学生時代に読めば、もっと共感しただろうに」という言葉を受け、なんとなく悔しい思いに。案外すんなり読め、今まで苦手意識があったというか単なる読まず嫌いだったんだなあと。さてこれを踏まえて本題に。

こちらも今更感はありますが、『文学少女と死にたがりの道化』「このライトノベルがすごい07、08」連続してベスト10入りした作品です。自称“文学少女”で物語を食べる妖怪だという天野遠子。文字通り本のページを引きちぎって食べます。なぜか彼女のおやつ係として執筆に取り組む元天才美少女作家の井上心葉(♂)。毎回毎回、テーマとなる有名文学に類似した事件が起き、その作品の人物と事件にかかわる人物の役割を照させることによって、事件を遠子先輩『想像』して解決していく本作。

この巻のテーマとなる有名文学が『人間失格』。先人の名作を踏み台にするという大胆な方法で書かれているのも話題になりました。著者が元ネタを把握し、隙なく構成しているので完成度は高いです。読書という行為に思い入れのある人には是非手にとって見て欲しい一冊です。

“文学少女”と死にたがりの道化 (ファミ通文庫)
野村 美月
エンターブレイン
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19号 世界平和は一家団欒のあとに

ども、「極彩色の毛」が中中手に入らない今日この頃、いかがお過ごしでしょうか?先輩が「このゲームには欲望センサーが付属していて、欲しいと思っている素材は手に入らない」と言っていたのが最近になって理解できてきました。さて、モンハンのことは置いといて、今回は、第13回電撃大賞にて金賞を受賞した『世界平和は一家団欒のあとに』を紹介。 本作は家族全員がヒーローで、世界を守ることが宿命付けられている、といった少少ぶっ飛んだ設定のお話。ここだけ聞くと、異能力バトル物に思えるかもしれませんが、本作のテーマは家族愛。タイトルどおり世界平和<家族で、作中にある「世界を救おうなんてアホなことは、俺と、俺の家族を救ったあとですればいい。」というセリフが全てを物語っています。父親がかつて異世界を救った勇者、母親がその世界のお姫様というトンデモ設定も笑えます。正義の味方、悪の大首領が家業というのも面白い。細かい笑いも多く、かつて異世界を救った聖剣が「大きくて邪魔」という長女の一言で、親父の書斎の片隅に置かれ、時折さびしそうに磨く元勇者の姿が切なすぎて、笑える。いいたいことがはっきりしているので、登場人物が多い序盤さえ乗り切れれば、後はスムーズに読めるはず。 3Fラノベコーナーにて平積みしているので、興味をもたれた方は手を伸ばしてみて下さい。

世界平和は一家団欒のあとに (電撃文庫)
橋本 和也
メディアワークス
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18号 ソードワールド2.0

ついに、発売されましたねえ、「ソードワールド2.0」。油断して押さえ気味に入荷指定したら、即日完売。失敗した・・・。倍いや3倍くらいは必要だった。売り損ねたあああああ。と、まあ後悔はこれくらいにして、とりあえずリプレイ読みました。GMは「へっぽこ」シリーズの秋田みやび。秋田らしいのんびりした感じは健在で、安易に萌えに走らないところも好感が持てます。ドラマティックなセッションを期待してる人には不向きですが、個人的にはこののんびりとした感じが好きです。プレイヤーも黒い人が多いし、それに振り回されるGMのやりとりも笑えます。ルールや世界観も思ってたより違和感がなかったし、良さげなのでは無いでしょうか。去年から今年にかけて、「火の国風の国物語」「ミスマルカ興国物語」「聖剣の刀鍛冶」と良質のファンタジーが出てきているので、個人的にはうれしい限りです。

あと、遅まきながらモンハン始めました。おもしろいっすね。話題になるわけです。メインはガンランス、サブで双剣使ってます。むずいけどヤリコミ甲斐があるってもんです。しばらく寝不足の日々が続きそうな感じで

ソード・ワールド2.0リプレイ  マージナル・ライダー(1) (富士見ドラゴン・ブック)
グループSNE 田中 公侍
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17号 アボガドの煮っころがし

今回は4月からアニメ化する作品+αを紹介。参考になればこれ幸いです。

☆「狂乱家族日記」日日日 ファミ通文庫 日日日(あきら)と読ますようです。前から気になってはいたし、いいチャンスかと・・・キャラクターが乱崎(みだれさき)凶華、凰火、雹霞などとやたら読みづらく設定している割には、文章は割りと読みやすかった。まだ1巻しか読んでないのでなんともいえないが先が楽しみ。謎のクラゲは一体ストーリーにどう絡んでいくんだろう?

狂乱家族日記壱さつめ (ファミ通文庫)
日日日
エンターブレイン
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☆「かのこん」西野かつみ MF文庫 さえない男の子にイキナリ綺麗な彼女が出来る、黄金パターンな作品。設定は違うが、電撃の「護くんに女神の祝福を」に似てる感じ。ベタな感じが好きな人にはオススメです。んー。個人的にはこの手のは飽きちゃった、というか苦手だな・・・。

かのこん (MF文庫J)
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西野 かつみ
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☆「我が家のお稲荷さま。」柴村 仁 電撃文庫 ほのぼの、癒し系。バトルもあるがほどほどです。文字数が多いので、ページ数の割には読むのに時間がかかりました。一度目で把握、二度目で味わう作品ではないでしょうか。挿絵も綺麗ですよ。

我が家のお稲荷さま。 (電撃文庫)
柴村 仁
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☆「アリソン」「リリアとトレイズ」 時雨沢恵一 電撃文庫 「キノの旅」もよかったが、「アリソン」もいい!わかりやすく、かといって幼稚ではない文章が絶妙。淡々としている文章に個性の強いキャラクター同士の会話が映え、物語全体のバランスが良い。黒星紅白の絵がまたいい。物語にマッチしている。 話はずれますが、サモンナイトのリメイク版も楽しみっすね。

アリソン (電撃文庫)
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時雨沢 恵一
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☆「図書館戦争」 有川浩 メディアワークス 実はまだ読んでないんです。レビューとかを読んでると、すごいおもしろそうなのですが、ハードカバーだとやっぱ手が出にくい。こんな事ではいかん。ちゃんと読も。でも、文庫化求む。

図書館戦争
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有川 浩
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☆「ヒャッコ」 カトウハルアキ フレックスコミック 私的昨年度コミックNO.1。あまりうまいとはいえないが、魅力的な絵柄。「女の子がたくさん出てくるゆるい学園モノ」という昨今ありきたりな作品でありながら、斬新さと爽やかさがあります。キャラ設定も実に典型的なのだが、誰も埋もれることなく生き生きとしています。不思議な空気を持っていて、学園マンガが好きな人は、はまるかも。アニメ化も決定したらしい。

ヒャッコ 1巻 Flex Comix
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カトウ ハルアキ
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ちなみに前回も書いたが、今年のNO.1は「聖☆おにいさん」。もう一回言っときます。おもしろいです。初めて、複数巻買って、友人に配りました。まだ読んだことのない人はぜひ手にとってみてください。

15号 聖おにいさん

すこぶるおもしろい!!まさか今年一番がこの時期に出ようとは・・・ モーニング2連載中の宗教?コメディ。イエスとブッタが、休暇を取り、地上にバカンスへ。 そしてなぜか、立川にアパート(6畳1間)を借り、共同生活を送っていくというお話。 内容的に多方面からお叱りを受けるんじゃない?という小ネタをちりばめた日常?コメディ。 神なのにやたら庶民的な2人?も、ツボにはまり癖になります。 欄外の二人のコメントも見逃せません。 中村さんは、スクエニから出てる「荒川アンダーザブリッヂ」もおすすめです。キャラクターが個性的過ぎるので、最初のうちは馴染めませんが、3,4巻くらいから面白くなってきます。 「聖おにいさん」はおそらく今年のこのマンガがすごい(宝島社)の順位に絡んでくると思うので、(個人的には1位予想)今のうちにチェックしときましょう。

13号 バカとテストと召喚獣

まずは書名を見て?何、この組合せ?バカとテストはわかるけど、召喚獣?第8回えんため大賞(エンターブレイン)受賞?08年このライトノベルがすごい(宝島社、絶賛発売中!!)第8位?そんなにおもしろいのか?と宣伝を兼ねて驚いてみたが、どんな話か想像つかん。

読んで最初に思ったのがバカ。ものすごいバカ。書名どおりステキバカな作品でした。ジャンルとしては学園ラブコメになるのかな?文章はまだ稚拙、話の構成も未熟だが、それを補ってなお余る「バカ」「勢い」そして「バカ」があります。テストの結果で学園生活が左右する文月学園で、最下層クラスであるバカ、ムッツリといった魅力的?な主人公達が、テンポ良い掛け合いで話を進めていきます。

この学園には特殊なシステムがあり、テストを受けることにより召喚獣を召喚することができ、テストの点によってその強さが決まる。その召喚獣を戦わせ、上位クラスの設備などを奪っていく。という戦闘パートがあるのだが、設定が甘くわかりづらいので、慣れるまで時間がかかるかも。本編はちゃんとネタを振ってから、オチをつける笑いなので、万人受けするのでは?

幕間には、キャラクターが受けたテストとその珍解答が載せられていて、本編よりもこちらの方がおもしろかったり。(めちゃイケの抜き打ちテストの珍解答ような感じ。)久々に何も考えずに読み、大爆笑した作品です。

バカとテストと召喚獣 (ファミ通文庫)
井上 堅二
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12号 フォーチュン・クエスト

ういィーーーーー。たまには、足が伸ばせる風呂もいいもんだ。健康ランドっていいね。ちょいと高いが、半日もいれば元が取れる気がする。しかし最近の健康ランドはすごいね。ミストサウナやら、アカスリやら、岩盤浴やら……しまいには冷蔵庫みたいな部屋(マイナス2度。身体を冷やすことにより、自然治癒力でアミノ酸を引き出しツヤのある肌を蘇らせます……らしい)もある。入ってみたが、私にはタダ寒いだけでとても健康になれるとは思えない。

とにかく多種多様で飽きがくることが無い。あと、腕のバンド(鍵無し)で、鍵が開けれたり、自販機でお財布携帯みたいに飲み物が買えたりするのは、ちょっとしたカルチャーショックだった。さて、風呂もいいが、私が健康ランドで好きな場所がもう一箇所、それは、休憩室。みんな各各の陣地を形成して、寝たり、本読んだり、ボーとしたりしている。他人が隣にいるのに、普通に雑魚寝しているのが、ちょっと不思議な光景である。でも不思議と落ち着く場所なんだよね。さてと、私も休むとするか……。

今回のお供は『フォーチュン・クエスト』(深澤美潮、角川スニーカー、電撃文庫)。1作目が発売されたのが1989年だから、18年も続いている作品。いわゆる剣と魔法のファンタジーなのだが、冒険者支援グループや保険会社など現実的要素が加えられている。

最大の特徴が、主人公たちのレベルが低いこと。18年続いているが、いまだにレベル8くらい。熟練パーティではなく、駆け出しヒヨッコパーティというところが、読者に親近感を与えてくれる。この世界では、冒険者支援グループで行われる資格試験に受かった者が冒険者として認められ、冒険者カードが交付される。一年に一度更新が義務(笑)。

このカードを身につけ、経験を積むことでレベルが上がっていく。職業の適正はくじで行われ、戦士、盗賊、魔法使い、詩人など、お馴染みの職業のほかに、農夫、運搬/運送など、冒険者の職業としてどうなんだろうと思われる職業も少なくない(ちなみに今挙げたのが主人公たちの職業。兼業も認められているらしく、主人公は詩人兼マッパー)。この組織に属すると、交通費、宿泊費の軽減などのサービスを受けることができるので、お得である。

他にもモンスター災害から身を守る保険会社や、クエストはシナリオ屋から買うなどと、他のファンタジー物とは少し違う感じがおもしろい。また、同作者の『デュアン・サーク』『青の聖騎士物語』はフォーチュンの時代から100年ほど前の話で、物語もリンクしているのであわせて読むと、さらに楽しめるはず。

さむっ。おっと湯冷めしてしまった。さて、もうひとっ風呂浴びるとするか。フォーチュンは電撃文庫で好評発売中。なお、10月に創刊のポプラポケット文庫にて新装版が発売します。 なお、前回紹介した『住めば都コスモス荘』は、絶版ではありませんでした。少し手に入りづらいだけのようです。申し訳ありませんでした。

新装版フォーチュン・クエスト〈1〉世にも幸せな冒険者たち (電撃文庫)
深沢 美潮
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11号 住めば都コスモス荘

あつーーー。しかし太陽もこんなに照りつけなくても……そんなことを思いながら、多摩川沿いをひた走る。今日はニューマシン(自転車)の慣らしで、ブラブラしてみようと多摩川サイクリングロードまで来てみた。晴れてるし、平日だから空いてて、気持ちいいなあと思ってたのも最初の1時間まで。この日の気温は35度。暑イイイ。暑すぎる。

突如、そうだ!!このマシーン(自転車)に名前を付けよー!!と思い、フレームにドッペルゲンガーと書いてるから「ボーマン教官」と命名。わかるやつにだけわかればいいや、と茹った頭で妄想しながらダラダラ走る。やべ!頭がボーとしてきた上、少し痛い。

これが熱中症なのかなと思いながら走ってると、立川を越えたあたりで、ビキイィ!!まずい、足攣りそう!運動不足かなあ。経験上無理して走ると確実にくるので(過去3回ほど同じ経験有)シフターを一番軽くして、道を引き返し、休める場所を探す。しばらく道を引き返していると、おおっ!コンビニ&日陰が!!ここで休むか。

コンビニでゲー○ーレードを購入し、水門が作る日陰へ。線路や橋の下などを通るとやたらいい風が吹いている。なんでだろう?ここも例外なくいい風が吹いている。まあいいか、気持ちいいし。と、思いながら横になり、本を取り出す。

今回のお供は『住めば都のコスモス荘』。最近だと『陰からマモル』(MF文庫から絶賛発売中)などを書いている阿智太郎の初期の作品である。「保父を目指す落第専門学校生の主人公、桜咲鈴雄。彼は知らぬ間にとある異星の会社の製品開発競争に巻き込まれ、新製品のモニターになってしまう。その商品というのが次期銀河連邦警察で採用されるパワードスーツ。鈴雄はそのパワードスーツを着込み、ライバル会社のモニターと競争しながら、地球に送り込まれてくる凶悪犯を逮捕していくことになる……」といったスペースコメディ?

舞台は地球だが。阿智太郎の作品は、何にも考えずに、ボーと読めるのがいい。疲れているとき、暇つぶしをしたいときなどに最適である。(ひどい事を書いてるようだが、ほめ言葉です。)この作品も主人公の変身後の名前が「ドッコイダー」主人公なのにドッコイダー。必殺技も「アップルカッター」効果はすごく綺麗にリンゴの皮がむくことができる、などなど。

とにかくユルユルな物語で、コスモス荘の住人はみな、主人公はもちろん、ライバル会社のモニターであったり、捕まえるべき凶悪犯なのに、変身前なので互いに気付いていないなど、お約束すぎて、逆にありえない展開になったりもしています。イラストが矢上裕というのもポイント高いです。

ちなみに矢上裕・画でコミック化もしています。いろいろ調べたら、アニメ化もしてたよう。さて、読み終わり顔を上げると日が暮れかかっている。結構休めたし、帰るとしますか。疲れたし、銭湯にでも行こうかな。

お!そういえば途中に健康ランドがあったな、あそこ寄っていこう。ちなみに今回も絶版の模様。あしからず

住めば都のコスモス荘 (電撃文庫)
阿智 太郎
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10号 LUNAR2 エターナルブルー

サーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。しかしまたよく降るなあ。こんだけ雨が続くと洗濯もできねえ。蒸し蒸ししてるし、部屋干しするとナマカワキだし、食い物も傷みやすいし、蒸し蒸ししてるし……。誰だよ今年「空梅雨」って言ったやつ。梅雨に入るのが遅かっただけで、ちゃんと降ってんジャン。ぬか喜びさせやがって……。でも、雨の音は割りと好き。ぼーっと聞いてるのも好し、なんか作業するときは集中できる。例えば、本を読むときには最高のBGMのような気がする。

『LUNAR2 エターナルブルー』(重馬敬・原作、細江ひろみ・著、角川スニーカー文庫)。大人気ゲーム(名作!! メガCD→SS→PSと移植、私はサターン版をやりました)のノベライズ。全3巻。「2」と銘打っている通り、『LUNAR シルバースターストーリー』の続編。前作が歴史として語られていたり、前作のキャラの子孫が出てくるので読んでおくと、より楽しめます。

天空に青き星をいただくルナ世界。その辺境で考古学者の祖父と暮らすヒイロは、ある日、謎の遺蹟《青き塔》と青き星が一筋の光で結ばれているのを目撃した。塔に駆け付けた彼は、そこでルーシアと名乗る少女と出会う。青き星からやってきたという彼女からルナの危機を聞いたヒイロは、世界を救うべく女神アルテナの元にルーシアを連れていく冒険を決意したのだった……。

と、お話は典型的な王道RPG。登場人物の動きが繊細でわかり易く書かれてる上、彼ら目的が純粋なので、共感しやすいはずです。最初は人間としての感情を持ち合わせていなかったルーシアが、ヒイロ達と旅していくうちに人間として大事なことを学んでいきます。そして、最終巻、最終決戦からエンディングへと続く怒涛の展開がこの作品の真の見所です。当時、目頭が熱くなりながらリモコンを握っていたのを思い出し、また泣きそうになりました。何回見てもいいエンディングです。

なので、興味を持たれた方は、本だけではなくゲームもして欲しいですね。映像、音があると、さらに感動できると思います。

……まだ降ってるのか、まあ仕方ねえか。梅雨だしね。することないし、金もねエ。昼寝でもするか………。ちなみに、今回も絶版です。興味を持たれた方は、古本屋さんを探してみてください。ゲームの方は、シルバースターはレジェンドと名を変えGBAで、エターナルブルーはPS版で手に入るんじゃないかなあ?

LUNAR2 エターナルブルー―青き星のルーシア〈1〉 (角川スニーカー文庫)
細江 ひろみ
角川書店
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9号 特殊駆逐業者出勤ファイル

今回は小林めぐみ、『極東少年』(全4巻+外伝1巻)。初めて読んだ小林作品です。「主人公、平山進の介は、ある日、ゴミ捨て場で一人の老人と出会う。その老人からもらった一粒の薬を呑んだ時から、すべてが始まった。彼の前に突然あらわれた謎の美少女、日下美和。彼女は災厄が封印されている「ナミの壷」を護る番人だと告げた。壷をめぐり、魔の手が進の介と美和に忍び寄って来た!!」平凡な主人公が不思議な力を手に入れ、謎の美少女が現れる。ベタなストーリーだが、当時はとても新鮮に感じられました。結構いい加減な感じだが、なぜか心に残る非常に好きな作品のひとつです。

『特殊駆除業者出勤ファイル』(全3巻)は、「西暦二一〇二年、東京メガロポリス南大宮区のとあるホールに特殊駆逐業者ゆうざん事務所のメンバーの姿があった。バイトの皓平は、美貌の青年・千寿、オマケの開発担当・美貴とともにリーダー・すずの指示をうけ、巨大うじ虫の駆除に四苦八苦していた。彼らは駆除後、猫耳娘を拾い、とりあえず・すずの自宅に連れ込み寧々と名付ける。さっそくチームに加わった寧々とともに、巨大亀駆除に出動した彼らだったが……。」近未来の東京で巨大化を遂げた謎の虫を駆除していく駆除業者の話。

結構深刻な問題だが、どこまでもお気楽で、軽いのに読ませる感じ、軽い割には印象的な場面が多々あり、思い出深い作品です。毎度毎度のコトながら残念ですが、両作品とも絶版です。あしからず。

始まりはいつも不自然―特殊駆逐業者出勤ファイル〈その1〉 (角川スニーカー文庫)
小林 めぐみ
角川書店
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8号 空の境界

はい、今回は映画特集とのコト。ラノベで映画といって、まず最初に思い出したのが、『スレイヤーズ』(神坂一)。当時、すでにTVアニメ化され、大人気だった本編シリーズとは別に、短編シリーズである『スレイヤーズすぺしゃる』を映画化。ギャグ8・シリアス2ぐらいの割合だった本編に比べ、短編はギャグ10・シリアス0といってもいい完全コメディ。大爆笑した記憶があります。

そのスレイヤーズと2本立てだった『クリスタニア』。こちらは、『ロードス島戦記』の水野良の作品。当時刊行されていた『漂流伝説クリスタニア』の十数年前のお話。映画を見ることで漂流伝説で謎だったことが理解でき、また、ロードスとも微妙にリンクしているので、水野作品のファンはニヤリとするはず。

次は実写映画化した『ブギーポップは笑わない』(上遠野耕平)。《世界の敵》と戦うために一人の少女の中から浮かび上がってくる、ブギーポップと名乗る人格と、さまざまな夢や、希望や、あきらめや、悩みや、いろいろな思いを持っている少年少女達の物語。「ブギーポップ(不気味な泡)」とは、周囲に異変を察知したときに自動的に人格が浮かび上がってくることを由来とする自称名。

他にも『銀英伝』『アルスラーン』『創竜伝』『妖獣都市』『宇宙皇子』『ロードス』『風の大陸』『MAZE』『バンパイアハンターD』などとさまざまな作品が映画化されています。今年に入ってからだと電撃文庫『灼眼のシャナ』『キノの旅』『いぬかみっ!』の3本立て(シャナ・キノは初心者でも楽しめるように作られてました。いぬかみが一番笑えました。)、ファミ通文庫『学校の階段』(実写版。小説を読んだ感じでは、コミカルでテンポもよく、実写化されてもあまり違和感がないのではないかと思います)がすでに放映されています。

さて、今回の一押し、これから公開される予定の『空の境界』。2年間の昏睡から目覚めた主人公、両儀式(りょうぎしき)は長く「 」に触れていた為、あらゆるモノの死を視ることができる《直死の魔眼》に目覚めてしまう。ナイフだけであらゆるモノを《殺す》ことができるその力は、式を昏い世界へと誘っていく。二年前の殺人鬼。浮遊する幽霊の群れ。物を視るだけで歪曲させる少女。人の死を蒐集する螺旋建築。数数の怪異と式の魔眼が衝突するとき、忘れられていた記憶が蘇る……。

公開日は未定。第七部作、レイトショーとのこと。いやあ、思い切ったねえ。ノベルス全7章を、凝縮せずにあえて七部作。楽しみですね。なお、原作は、文章にクセがあり難解なので、スキキライがはっきりする作品だと思います。個人的には自信を持ってオススメできる作品なので、まだ読んでない方はぜひ読んでみて欲しいです。

はまったら、次は『月姫』『Fate』『DDD』とドンドン手を出していって欲しいですね。前述したとおり、難解な語句、また造語も多いので、詳しく知りたい方は『月姫読本』(宙出版)をあわせて、お買い上げいただけると、よりいっそう楽しめると思います。

空の境界(上) (講談社文庫)
奈須 きのこ
講談社
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7号 極道くん漫遊記

まずい。ネタが全く思い浮かばない。締め切りはもうとっくに過ぎてるし、どうしよう。 考えられるべきネタはもう出し尽くした。それなら作るか。んんん……。思い浮かばん。大体どんな場面で本を読むかなんて、よくよく考えたら限られてくる。それに加えて絶版本というシバリも加えてしまった。自分で自分の首を絞めてどーすんだ。俺のバカタレ……。

まずい。あせればあせるほどネタが出てこない。どーすんべ。今日明日までには提出しろって言われてるし、ここんところ毎回遅れてるしなあ……。あああああああああああああああああああああああああああああああああ。とりあえず、現実逃避すっか。

今回のお供は『極道くん漫遊記』(角川スニーカー文庫)。現在、エッセイなどで活躍している中村うさぎのデビュー作で、コミック化、アニメ化したヒット作品である。その名の通り自分勝手で極道な性格の冒険者「ゴクドー・ユーコット・キカンスキー」と、彼を取り巻く個性豊かなキャラクターが繰り広げる笑いあり涙あり?の冒険活劇。

主人公のゴクドーくんは名が示すとおりワガママかつ傍若無人な性格で他人の迷惑などお構いなし。自由気ままに生きることを本分としている。金儲けなどの悪巧みのために仲間を利用することも多々あるが(金のために即決で敵に寝返ったり、ヒロインを酔い潰して売っぱらったり)大抵はしっぺ返しに遭う。

ま、お約束という奴である。その被害者でもあり、ゴクドーくんの天敵でもあるヒロイン「ルーベット・ラ・レェテ」その気の強さはゴクドーくんでさえたじたじ。そのルーベットに惚れていて、自分の都合で相手を振り回すという点ではゴクドーくんと互角でありライバル的存在の「プリンス(ニアリー)」キザ?で無類の女好きである。そのプリンスに仕えるランプの精、まじめで実直、無類の酒好きの「ジン」普段はひげ面の大男だが、セクシーな美少女ジンに変身することもある。

作中ではゴクドーくん達はタイトルどおり諸国を漫遊しているのだが、その先々で色色問題を起こしたり、起きたりしていく。例えば三巻では、平安時代の日本のようなイナホ国に行き、そこで仏教の伝来により信仰心も力も失いつつある土地神はめられ(自業自得?)、仏たちと戦うことになる。ま、得意の悪知恵でまともに戦おうとはしないのだが……。このような寓話的要素が見られ、魔法のランプ、スフィンクスのリドル、酒呑童子、浦島太郎、天の岩戸、葛の葉、西遊記、など様様である。途中からはゴクドーとルーベットは神の力を得て、不老不死となってしまい、何十年何百年と旅を続けていくこととなる。めちゃくちゃなストーリーだ。

寓話をモデルにしているだけあり、最後には教訓的なオチもあり、読んだ後には意外なほど清涼感がある。本作は、スニーカー文庫から十三冊(完)、電撃文庫から外伝として十巻(未完、6年以上続きが出ていないので、もう出ないかも)刊行している。ギャグ9:シリアス1くらいの割合なので、気軽に笑いたい人にはオススメです。

おっと、ついつい読みこんじまった。原稿どうしようかなあ。ま、明日考えよ。ちなみに今回も絶版である。あしからず。

極道(ゴクドー)くん漫遊記 (角川文庫―スニーカー文庫)
中村 うさぎ
角川書店
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6号 涼宮ハルヒとMU的なナニカ

いつも絶版ばかりを紹介しているこのコーナー。毎度毎度拙い文章にお付き合いただき、真にありがとうございます。さて今回は趣向を変えてフェアのお知らせを。只今、当ブックス・ルーエ3Fに於いて、昨年爆発的にヒットした涼宮ハルヒの新刊に乗っかって「涼宮ハルヒとMU的なナニカ」フェアを開催しております。フェア内容は、まあタイトルどおり、超常現象から、UMA、UFO、フリーメーソン、古代文明など、所謂MU的な本を集めてみました。その一部をご紹介。

☆坂本竜馬とフリーメーソン(鬼塚五十一、学研)
★世界UMA事件ファイル(並木伸一郎、学研)
☆世界怪奇事件ファイル(並木伸一郎、学研)
★UFOとアポロ疑惑月面異星人基地の謎(コンノケンイチ、学研)
☆未確認飛行生物UFC「スカイフィッシュ」の謎(並木伸一郎、学研)
★新トンデモ超常現象60の真相(皆神竜太郎ほか、楽工社)
☆超常現象大図鑑(羽仁礼、成甲書房)
★矢追純一のUFO大全(矢追純一、リヨン社)
☆UMAハンター馬子 完全版(田中啓文、早川書房)

こんな感じです。本当は「MMR」を置きたかったんだけど、残念ながら絶版でした。知らない人のために、「MMR」は、1990〜1999年までマガジンで石垣ゆうき氏によって長期不定期連載された伝説の漫画です。MMRとは『週刊少年マガジン』編集社員、キバヤシ(リーダー)・ナワヤ・タナカ・イケダ・トマルの5人で編成されたマガジンミステリー調査班(マガジン・ミステリー・ルポルタージュ)のことで、(なお彼らは実在の編集者がモデル。現在も各所で活躍しているらしい)。

当初はMMRのメンバーが超常現象を科学的に解明していく漫画であったが、途中からノストラダムスの大予言を主軸に置き始め、謎の組織や政府の陰謀が登場し始める。MMRでは、1999年7の月に人類が滅亡する、ノストラダムスの予言を煽り、当時の小学生たちを恐怖に陥れられた(言い過ぎか)。でも、90年代のノストラダムスブームはMMRによって起こされたと言っても過言ではないだろう。「この○○こそ、○○の○○○○だったんだよ!!!」「な……なんだってー!!」のパターン会話は、漫画史に残る名台詞となった。またこの漫画を、90年代最高のギャグ漫画と称する人も少なくない。

前述したとおり、この本は残念ながら絶版です。古本屋で探してみてください。フェア自体は4月いっぱいやってる予定です。興味の湧かれた方は3Fまで足をお運びください。

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)
谷川 流
角川書店
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MMRマガジンミステリー調査班 1 (少年マガジンコミックス)
石垣 ゆうき
講談社
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5号 妖怪寺縁起

うおっサブッ!身を裂くような寒さで目が覚める。ふとん、毛布を踏んでしまい、何も上にかかっていない。携帯を見ると朝の5時。寒いはずである。何でわざわざ休みの日にこんな早く、目が覚めてしまったんだろう。平日はギリギリまで寝てるのに……。不思議でしかたない。なんとなく2度寝する気もおきず、とりあえず小便。もどって、何気なしに見てみると、朝の光に包まれたわが部屋は、まるで廃墟がごとく散らかっている。ココントコ忙しかったからなあと誰に言うでもないが言い訳してみる。

よし!めずらしく、早起きしたわけだし、偶にはちゃんと掃除するか!窓を開け、換気をしつつ布団を干し、洗濯機をまわし、掃除前にファ○リーズ。我が家はなぜか埃が多く、掃いても×2わいてくる。これはきっと埃ではなくケセランパサランに違いない、ヤッパリコノ世ニ妖怪ハ存在スルンダ!と愚にもつかないことを考えつつ、部屋を掃いてゆく。こうしてみるとやはり目立つのは本の量である。(カラーボックス×4段)×3列+ベット下ストッカー4箱+枕脇平積2列。ちょっと買いすぎかな。実家からももう送ってくるなと言われているし、かといって売るもやだなあ、でもこれ以上集めたら床が抜けそうだしなあと悶々としながら、本棚の整理を始める。おやっ?

懐かしい本が出てきた。冴木忍『妖怪寺縁起』(角川スニーカー文庫)。秩父市街地のはずれにある小さな山寺。そこは、妖怪がらみの品を引き取って欲しい、あるいは妖怪を鎮めてほしい人がやってくることから、人はそこを『妖怪寺』と呼んでいる。そこに住む時期住職、望月蔵人が本作の主人公。本編はその蔵人がいきなり寺のご本尊に襲われるところから始まる。

といっても本作は主人公が妖怪たちを倒していくようなアクションノベルではなく、異能の力が原因で壊れてしまった人間関係や様様な問題を主人公らが前向きな方向に解決していく冴木作品にしては明るい作品です。登場するキャラクターもそうなのですが、「妖怪寺」という場所も大変魅力的です。本作に出てくる妖怪は所謂、付喪神がほとんどで、その付喪神たちは、好き勝手に出てきて悪戯したり、住職と酒盛りしたりと、人と妖怪が共存しているといった感じです。ちょっと、行ってみたい気がしますね。

月2くらいで。人の愚かさなどが描かれいている割には、さほど重さを感じることもなく、それを包み込むような暖かさがあります。切なく、美しく、やさしい、透明感のある文章で、その上でどこかユーモラスな会話が悲壮感を感じさせず、読んだあとは、心が洗われるような気分になります。

本作は富士見で2冊(表題は星空のエピタフ)、角川で3冊で完結なのですが、ぜひ続編を書いて欲しいですね。

ふう。おもしろかった、つい全巻読みしてしまった。今は、10時か……。そりゃ、明るいはずだ。天気もいいしブラブラすっかな。ちなみに、今回も絶版である。そういえば吉祥寺のブッ○オフに角川の方の一巻なら、置いてあったんで興味の向いた方はどーぞ。

花の影 水の月―妖怪寺縁起〈1〉 (角川スニーカー文庫)
冴木 忍
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4号 〈卵王子〉カイルロッドの苦難

おおっ寒っ。近頃、めっきり寒くなってきた。せっかくの休みなのだが、給料日前なので金が無え。家にいてもエアコン代が嵩むだけだし、外に出るか。でも寒い。こんなときは電車に乗るに限る。喫茶店と違って、何時間いても白い目で見られることがないし、どんなに乗っても初乗り料金の駅まで戻ってくれば、130円ぐらいですむ。

さて、今回は中央線にするか井の頭線にするか……よし!井の頭線にするか!井の頭線なら、2往復もすれば1冊読み終わるにはちょうどいいだろう。そうと決まれば本を片手に出発だ。

今回のお供は冴木忍『〈卵王子〉カイルロッドの苦難』(富士見ファンタジア文庫)。卵から生まれた王子、カイルロッド。そのショックで母親は彼を産んですぐ死亡してしまった。しかし、父王の愛情に包まれ、王子はいたって暢気な青年に育っていた。そんな過去を持っているおかげで、婚約者から何度も逃げられている彼。しかし、それほどショックも受けておらず、盆栽さえあれば幸せという少しおかしな王子だった。

だが、ある日突然カイルロッド以外の国の人間がみんな石になってしまう。そんな中、魔法使いの少女ミランシャと剣士イルダーナフだけが石にならずに無事であった。そして、カイルロッドとミランシャ、イルダーナフの3人は石になったみんなを元に戻すための旅に出る。途中で魔法を掛けられたり、刺客が襲ってきたりなど、様々な出来事が起こるが、それでも3人は旅を続ける。そして、その中でだんだんとカイルロッドの出生の秘密が明らかになってゆく……といった感じのお話です。

この作品をはじめて読んだのが、中学生のとき。あまりに重いストーリー展開、度重なる悲劇に軽くトラウマになったくらいです。軽くネタ晴らしになってしまいますが、最後は一応ハッピーエンドで終わります、が、中学生の時分にはどうしてもハッピーエンドに思えなくて、苦しんだ記憶が残ってます。エピローグはかなり泣けるので、泣かせ系ファンタジーが好きな人には自信を持ってお勧めできる作品です。

ふう、今回も有意義な時間が過ごせた。今どこだ?次は下北か。ちょうどいい。腹も減ったことだし、久しぶりにマッ○で飯でも食ってくか。ここのハンバーグは最高にうまいんだよな。おっと、ちなみに今回の作品も絶版であります。悪しからず。

旅立ちは突然に (富士見ファンタジア文庫―「卵王子」カイルロッドの苦難)
冴木 忍
富士見書房
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3号 シェアード・ワールド・ノベルス

グーンググーング、ヴウーーーーン……あちこちから洗濯機の音がする。そうここはコインランドリー。ここん所天気が悪くて、まともに洗濯ができてない。部屋干しするのも嫌だから久しぶりに来てみた。夜のコインランドリーは、やけに落ち着く。ヒトケが少なくて静かだし、座って寄りかかると背中に当たる乾燥機の振動も心地よい。洗濯に50分、乾燥に20分(10分だと乾ききらないので俺は嫌)、一冊読むにはちょうどいいくらいだ。

今回のお供は、『シェアード・ワールド・ノベルズ〈妖魔夜行〉』(友野詳ほかグループSNE、角川スニーカー文庫)。シェアード・ワールドとは、一つの世界観を設定して、複数の作家さんがそれぞれの持ち味を生かして色々な物語を作り出していく形式です。〈妖魔夜行〉シリーズは都市伝説やら昔話やら、人間の想像力が生み出してきた、異形の存在を、新たな解釈でよみがえらせた、現代妖怪譚です。主な舞台は東京で、井の頭公園んかも出てきたりします。

1冊に大体3話載っていて、その3話がリンクしていたり、1話完結だったりとそれは毎巻違います。このシリーズにおける〈妖怪〉は人の思いが生み出したものという前提があり、大昔に生み出されそのまま生き続けているいわゆる「妖怪タイプ」、人と交じり現代において〈先祖がえり〉として復活した「半妖タイプ」、新たに現代で生まれた「都市伝説タイプ」の3タイプにわかれます。

〈妖魔夜行〉シリーズは「妖怪タイプ」の中の人の世に溶け込んでるキャラクターがメインとなり様々な問題を解決していく物語です。例えば、これまで普通の人間だと思っていた女子高生が紆余曲折あって女郎蜘蛛の「半妖」であったことに気付き、人として生きて行くか妖怪として生きてゆくかの葛藤を描いた話。痩せたいという女性の想念から生まれた[痩せ女]、携帯電話の雑音から生まれた[ノイズ]、これらの「都市伝説タイプ」では生まれたばかりでパワーはあっても、知性が乏しいので、暴走してしまい、それを退治もしくは沈静させる話などがある。

このシリーズでは人の思いがあれば、滅んだ妖怪でも何十年後何百年後かに復活する可能性があるので、昔滅ぼされた「妖怪」が復活し、それを人間が悪用し自滅する的な話もあります。あとは付喪神。日本刀とそれに取憑かれたサラリーマンの話、アメリカに敵意を持つおじいさんと零戦の話、などと様々です。

このシリーズは作家陣も豪勢で、友野詳をメインに、安田均、山本弘、水野良、清松みゆき、拓殖めぐみ、高井信、北沢慶、三田誠etcと、豪華な顔ぶれがそろってます。これだけそろってるのだから、ジャンルも多彩で、本格的な怪奇もの、ミステリテイストの入ったもの、ド派手なアクションもの、ほのぼのしたラブコメタッチなもの、思わずジーンと来るハートフルなど大盤振舞です。

おっとそろそろ乾燥が終わったようだ。ちなみにこのシリーズも絶版なので、古本屋で探してみてください。続編の『百鬼夜翔』シリーズは普通に買えます。興味があったら読んでみてください。

妖魔夜行 迷宮の化身―シェアード・ワールド・ノベルズ (角川スニーカー文庫)
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2号 コクーン・ワールド

夜中にグーと腹がなる。まずい、猛烈にカレーが食いたい、という衝動にかられ、外に出る。この時間だと、コンビ二か「松○」かな。でも旨いの食いたいしな。よし自分で作るか! そう思い立ち、一路「肉のハ○マサ」にむかう。

ほどなくして店に着き、かごを持って物色を始める。ここは来る度に何故かテンションが上がる。たまねぎジャガイモにんじんバターとかごに入れていき、卵189円か……他より安いけど、まだまだ高いなあ、早く安くなんないかなあと、だらだら考えながらいくと、精肉コーナーで奴に出会った。なに!モツがキロ352円だと!安い安すぎる!そこで、私の頭と腹は一気にモツ鍋に変わる。熱々のモツ鍋にキーンと冷やした日本酒。クー、たまらん!!キャベツごぼう白滝を買い足し、レジに向かう。そこで一人用土鍋100円に出会い私のテンションはさらに上り、チャリンコ激コギで家へと向かう。家に着き、モツと野菜を水洗いし、ざっくばらんに切り、鍋へとぶち込む。そこで「モツは水から」と頭によぎり、何でか知らないけど一緒にぶち込む。

そこまで準備して、鍋の前に文庫本片手に陣取る。あとは煮だってから、調味料をぶち込み、さらに煮込む。小一時間くらい。ちょうど一冊読むにはいい時間だ。

今回のお供は『コクーンワールド3、夜明けに笑う冒険者』(角川スニーカー文庫)。著者は(目標が)600万部の男こと友野詳。この本は、私がはじめて読んだライトノベルで、高校生のとき同級生からイチゴオレ1パックで買った、思い出深き品である。

この作品は、ソードワールドのパロディ物なので、TRPG経験者やリプレイ本を読んだことがある人には馴染み深い(?)ライリー、ラーファ、ダラディス、ラオン賢者学院などといったギリギリな名前が結構出てくる。中には灰色の魔法戦士といったこれはアウトでしょ的なキャラクターも出ており、ハラハラさせられる。魔法も友野的解釈がされており、例えば精霊は極端におだてに弱いので「いよっ、こんちわ、またいいお日和でございますよ。どうですか、ちょっとここらあたりの明かりを扉にして、すーとこう、精霊界からやってきていただきましてでしてね。このあたりをあなた様のお美しい輝きで照らしてやってはいただけませんでしょうか。私らのような薄汚いものでも、あなた様の輝きの下では、ちょっとはましに見えようというもので」と唱え、下位精霊であるウィル・オー・ウィスプ召喚する。卑屈である。こんな呪文は恥ずかしいので精霊語と唱えている。レベルの高い精霊使いは揉み手ひとつでイフリート、「いよっ!」の掛け声ひとつでベヒーモスといった上位精霊を召喚できる。

などと大変楽しい。キャラクターも個性的な人物ばかりで、回を増すたびに増えて行き、最後には18人(?)パーティになっている。その中で一番の良識人(?)はペットのポコ。

おっと、そんなこんなで鍋が完成したようだ。一杯引っ掛けて寝るとするか。ちなみにこの本も絶版である。いい本がどんどん絶版していって悲しいね〜。

コクーン・ワールド〈3〉夜明けに笑う冒険者 (角川文庫―スニーカー文庫)
友野 詳
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1号 大久保町シリーズ

さてさて、私が独断と偏見で面白いと思ったラノベを紹介していくこのコーナー、記念すべき第一回は田中哲弥著『大久保町シリーズ』であります。このシリーズは『大久保町の決闘』『大久保町は燃えているか』『さらば愛しき大久保町』の三部で構成されるシリーズで、兵庫県明石市に実在する「大久保町」が舞台になっています。

明石市大久保町はガンマンの町である。ここでは男はみんな拳銃を携帯してるし、決闘で人を殺しても罪にはならない。そんな馬鹿なと言われても本当のことである。この本に嘘はない(大久保町の決闘)
明石市大久保町は、現在ナチス占領下にある。第二次世界大戦終結後、再起を誓って潜伏したナチスな残党などと関係は謎であるが、とにかく占領されている。本当だ。嘘ではない。(大久保町は燃えているか)

上記の文からわかるように大久保町はガンマンの町だったり、ナチス占領されていたり、最後のシリーズでは大久保町が…(ネタバレしてしまうので書かないが)してしまったりします。主人公は毎回変わるが、共通してちょっと変わったというか変な性格の青年で、それと拙くはあるがテンポのいいストーリーが噛みあってすごい楽しい作品に仕上がっています。

脇役も、とにかく人を驚かすのが趣味な双子のおっさん、筋骨隆々の黒人ガンマン・キヨミチャン、キザな台詞を使いたがるくせにその後のフォローを一切考えていないバーテンダー、間の抜けた魔法瓶マニア、わざと根性の悪い看護婦たちを集めたとしか思えない国連病院(なぜ大久保町に国連病院があるかは不明)と、魅力的なキャラクターばかり。

勘違いが勘違いを呼び、誤解されたままテンポよくストーリーが進んでいく痛快アクションコメディ!毎回巻末にその後のイラストが載っている演出もかなりうれしいです。

ここまで推しておいてなんですが、残念ながらこの作品はただいま絶版状態にあります。なので、読みたい方はブックオフかアマゾンあたりで探してみてください。このシリーズのキャラクターが出てくる短編集『やみなべの陰謀』は早川書房から復刊されているので、興味のある方は読んでみて下さい。

大久保町の決闘―COLLECTOR’S EDITION (ハヤカワ文庫JA)
田中 哲弥
早川書房
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